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保育士のひきだし

2020.09.09

保育園での食物アレルギーへの対応を紹介!保育士が知っておくべき対処とは

さまざまな要因によって「食物アレルギー」のある子どもが増えている昨今。この記事では食物アレルギーへの対応について悩んでいる保育士に向けて、保育園で取るべき食物アレルギーへの対応をご紹介いたします。

食物アレルギーとは?原因となる食材例も解説

日本ではここ15年ほどの間で食物アレルギーが増加傾向にあります。現在は、国民の3人に1人が何らかのアレルギーを持っているといわれている時代です。特に、食物アレルギーは1才未満の乳児で発症するケースが多いので、保育園でのアレルギー対応が重視されています。

2019年には「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」が改訂されたこともあり、いまやアレルギーを持つ子どもの対応は、保育士にとって必要不可欠な業務と言えます。

それでは、まず食物アレルギーとは一体どんなものなのか、定義やメカニズム、アレルゲンや症状をチェックしていきましょう。

【参考】

厚生労働省「食物アレルギー」

厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019 年改訂版)」

アレルゲンとなる食物が原因で引き起こされる

食物アレルギーとは、特定の食物を摂取したことが原因で、体が異物を排出しようとする「免疫反応」が起こる症状です。免疫反応は、人間が菌やウイルスから体を守るために必要なメカニズムですが、それが無害な食物に反応してしまうことが、アレルギーも主な問題点だと言われています。

アレルギーの主な症状としては、じん麻疹・湿疹・下痢・咳などが挙げられますが、人によって症状やアレルゲンとなる食物は異なります。乳児の場合は、体の器官が発達途中で抵抗力も弱いので、特に注意が必要です。

【参考】

厚生労働省「食物アレルギー」

厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019 年改訂版)」

代表的なアレルゲンは卵・牛乳・小麦粉

厚生労働省による「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン2019」には、アレルゲン(アレルギーの原因食品)は、卵・牛乳・小麦粉が特に多いと発表されています。

【アレルゲンの割合】

  • 39
  • 牛乳8
  • 小麦7
  • ピーナッツ1
  • 果物4
  • 魚卵7

そのほか、甲殻類やそばなども代表的なアレルゲンとして含まれています。乳幼児の場合、複数のアレルギーを発症するケースも少なくありません。

【参考】

厚生労働省「食物アレルギー」

厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019 年改訂版)」

アレルギーの症状は多様

アレルギーを持っている子どもが、アレルゲンとなる食物を誤って摂取した場合は、さまざまなアレルギー症状を引き起こします。それでは、主な症状を解説します。

皮膚に現れる症状

皮膚に現れる症状としては、以下が挙げられます。

  • かゆみ
  • 赤み
  • じんましん
  • 湿疹

皮膚はアレルギーの症状の中でも特に症状が出やすい部位です。ただ、アレルギーでなくても、乳児期はかゆみや湿疹を伴う「乳児アトピー性皮膚炎」にかかる子どもが多いので、見分けが難しいケースもあります。そんなときは、皮膚以外の症状もあわせてチェックしましょう。

目・鼻・口に現れる症状

アレルギーの症状が目・鼻・口に現れるケースもあります。

  • 目…目のかゆみ、目の腫れ、目の充血
  • 鼻…くしゃみ、鼻水、鼻づまり
  • 口…口内の違和感、唇の腫れ

この中では目の症状が発症されるケースが多いです。

消化器系に現れる症状

消化器系の症状は以下の通りです。

  • 腹痛
  • 吐き気
  • 下痢

場合によっては、症状として血便が現れるケースもあります。

呼吸器系に現れる症状

呼吸器系の症状は以下の通りです。

  • 声のかすれ
  • のどがゼーゼー、ヒューヒューする
  • 息がしにくい

悪化すると呼吸困難に陥る可能性もあるので、注意が必要です。

アナフィラキシーショック

「アナフィラキシー」とは短時間のうちにアレルギー症状が複数かつ同時に出現した状態を指します。「アナフィラキシーショック」は、血圧が低下し意識レベルが低下する、または脱力するなどの重篤な状態です。すぐに対応しないと、生命にかかわるため、迅速な対応が求められます。

アナフィラキシーを起こす要因は食物アレルギーだけではありませんが、子どもの場合は食物アレルギーが原因のケースが多いと言われています。

【参考】

厚生労働省「食物アレルギー」

厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019 年改訂版)」

保育園でできる5つのアレルギー対策

食物アレルギーは3歳以下の有病率が高いので、05歳児を受け入れている保育園では適切なアレルギー対応が求められています。基本的に保育園では、アレルギーを持つ子どもがいた場合は、次のような順番で対策していきます。

①     子どものアレルギーに関する情報を保護者の方からヒアリング

アレルギーを持つ子どもが入園する際は、まず情報の把握からはじめます。入園面接のときに、保護者の方から申し出てもらい(健康診断やそのほかアレルギーに関する書類を見せてもらう)子どもの状況を把握しましょう。アレルギーによる保育園内での特別な対応が求められる場合は、「生活管理指導表」を配布して、保護者の方やかかりつけ医に記載してもらいます。

生活管理指導表とは、子どものアレルギー対応に関する情報を保育園・保護者の方・医師が共有する書類です。その後、生活管理指導表をもとに再度保護者の方と面談をします。

  • 食事環境
  • 服薬
  • 除去
  • 環境設備

上記のような具体的なアレルギー対策について、保護者の方と保育士、園長や調理師を交えて話し合いを進めていきます。

【参考】

厚生労働省「食物アレルギー」

厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019 年改訂版)」

②     アレルギーを持つ子どもには個別の献立を作る

アレルギーを持つ子どもの個別対応については、保護者の方との話し合いの中で決めていきます。その中でも、保育園でできる食事提供に関する対応方法は大きく分けて3つあります。

  • 除去食…アレルゲンとなる食品を除去した給食を提供する
  • 代替食…アレルゲンとなる食品を除去する代わりに、その分栄養を補う食品を給食にて提供する
  • お弁当対応…給食時に弁当を持参してもらう、または保育園側で除去食や代替食が用意できなかった場合のみ弁当を持参してもらう

アレルゲンの代表である卵・牛乳・小麦粉は栄養価が高く、多くの給食で取り入れられています。これらの食品が主菜となる場合は、除去食だけでは栄養価が足りなくなってしまう可能性があるため、あらかじめ代替食献立を考えておきましょう。また、献立を立てる際はなるべくアレルゲンとなりうる食品を避けるのも対策の1つです。たとえば、魚卵やナッツ類、甲殻類は代表的なアレルゲンに含まれています。こうした食品を献立に含めないことで、代替食を作る手間も省けますし、アレルギー症状の誘発も避けられるでしょう。

【参考】

厚生労働省「食物アレルギー」

厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019 年改訂版)」

③     保育園の職員間で情報共有

アレルギー対応の際は、保育士、園長、調理師、看護師などの全職員で情報を共有し連携することが重要です。具体的な取り組みは次の通りです。

  • 基本なアレルギー対応についての共通理解
  • 「アレルギー疾患対応マニュアル」の作成
  • アレルギー対応についての研修の実施
  • 地域の医療機関との連携

アレルギー対応の前提として、アレルギーのメカニズムや、代表的なアレルゲン、体の症状など、アレルギーに関する基本的な知識を職員全員が身に付ける必要があります。そのためには、アレルギー疾患対応マニュアルを作成して、アレルギーの対応方法や緊急時の対応の流れなどを記載するのが効果的です。

また、職員による専門性の向上も大切です。アレルギー対応についての研修やセミナーを実施して、一人ひとりがアレルギーに関する知識を深めていくことで、スムーズかつ的確な対応が実現するでしょう。特に、子どもがアナフィラキシーを起こした際には、職員全員がアナフィラキシー補助治療剤「エピペン」を扱えるようにしておくことが大切です。

【参考】

厚生労働省「食物アレルギー」

厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019 年改訂版)」

④     定期的に保護者の方と面談する

保護者の方との面談は、入園面接時や生活管理指導表配布時だけでなく、定期的に実施するようにしましょう。子どものアレルギーに関しての新しい情報はもちろん、家庭での食生活や子どもの様子などを聞いて、保育園での対応にも生かしていきましょう。

⑤     生活管理指導表は毎年更新する

「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」では、生活管理指導表は1年に 1 回以上更新することが推奨されています。子どものアレルギー状態を常に最新にしておくことで、適切な対応が実施できるはずです。場合によっては、アレルギー対応が不要になるケースもあるので、小まめに更新することをおすすめします。

【参考】

厚生労働省「食物アレルギー」

厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019 年改訂版)」

保育士向け!アレルギー対応のポイント

担当するクラスの中に、アレルギーを持つ子どもがいた場合の対応方法を解説します。

第一優先は誤飲・誤食を防ぐこと

アレルギーを持つ子どもを対応する際は、誤飲・誤食の防止を最優先にしましょう。誤飲・誤食の主な原因は、職員による配膳ミスです。アレルギーを持つ子どもに除去食や代替食を提供するときは、職員間で2重チェック、3重チェックをし、配膳ミスがないように心がけましょう。

【参考】

厚生労働省「食物アレルギー」

厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019 年改訂版)」

アレルギーの子どもの献立表を張っておく

アレルギーの子どもの献立表を張っておくのも、誤飲・誤食の防止に有効です。朝礼や配膳前に献立表を確認して、全員が認知することで、配膳ミスや調理ミスが防げます。

食器やトレーの色を変えて分かりやすくする

配膳ミスを防ぐには、食器やトレーの色を変えるのがおすすめです。配膳の際も目に付けやすいので、ほかの子どものトレーと間違える心配もありません。保管場所も違う場所にするとなおよいでしょう。

【参考】

厚生労働省「食物アレルギー」

厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019 年改訂版)」

子どもの座る席を決めておく

子どもの月齢が低い場合、ほかの子どもの給食を誤って食べてしまう可能性があります。そのため、アレルギーを持つ子どもの席を、同じアレルギーを持つ子どもの側に指定するといった対策が必要です。

もしもアレルギーを起こしてしまったら?緊急時の対応方法

子どもが誤飲・誤食によってアレルギー反応を起こしてしまった場合の対応方法を解説します。

  • 顔色が青ざめている
  • 吐き気、腹痛が止まらない
  • 声のかすれ、咳、呼吸困難
  • 意識不明、ぐったりしている
  • 尿や便を漏らす

上記の症状は緊急性の高い症状のため、迅速な対応が求められます。

緊急時は救急車を呼ぶ

子どもがアナフィラキシーショックを起こした場合や、症状が重篤化している場合は、救急車を呼びましょう。緊急時の連絡先を記載した「アレルギー疾患対応マニュアル」を施設内に貼っておくと、スムーズに対応できます。

【参考】

厚生労働省「食物アレルギー」

厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019 年改訂版)」

内服薬やエピペンを使用

内服薬やエピペンがある場合は、速やかに使用しましょう。エピペンが複数ある場合は、一度打ってから10分程度経っても症状が改善されないのであれば、再度打ちます。

呼吸がない場合は心肺蘇生

子どもに呼吸がない場合は、心臓マッサージやAEDを使用します。

保護者への連絡

ほかの職員がエピペンや心臓マッサージなどの対応をしているときは、手が空いた職員が保護者の方へ連絡しましょう。

経緯をヒヤリハットや報告書に記録

現場が落ち着いたら、トラブルの経緯をヒヤリハットや報告書に記録します。同じことを繰り返さないよう、職員間で共有していきましょう。

まとめ

食事は子どもの成長に欠かせない要素ですが、アレルギーを持つ子どもにとっては、命の危険にもなりうるものです。常に職員や保護者の方と連携を図りつつ、適切な対応を実施することが、保育園にできる最善の方法と言えます。

子どもの健康と安全を守るために、配膳の工夫やマニュアルの作成、アレルギーに関する研修の実施などを心がけていきましょう。


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