保育のひきだし こどもの可能性を引き出すアイデア集保育のひきだし こどもの可能性を引き出すアイデア集

保育士のひきだし

2020.08.12

保育園の避難訓練の目的とは?方法や子どもにわかりやすく教えるポイントも紹介

子ども・保護者・保育士、それぞれの命と健康を守るための「避難訓練」。日本は他国と比べて自然災害が多く、とくに近年は、各地で地震・豪雨・台風などの大きな災害が連続して発生しています。また、不審者侵入による事件も起こっており、さらなる防災・防犯意識の向上と対策の強化が重要視されています。実際に災害が発生した際、的確に判断し、冷静かつ迅速に対応するためには、保育園でも定期的な訓練が欠かせません。

そこで今回は、保育園の避難訓練について徹底解説!避難訓練の目的や災害ごとの訓練方法、さらに、子どもたちに避難訓練の大切さを伝えるポイントもご紹介いたします。子どもと一緒に効果的な避難訓練を実施しましょう。

保育園で避難訓練をするねらい

避難訓練は、実際に災害が発生した際、安全に避難できるようにすること、災難時の避難方法に慣れておくこと が最大の目的です。

では、子ども・保育士・保護者、それぞれの立場でとくに意識しておきたいねらいをより詳しく確認していきましょう。

子どもにとってのねらい

子どもたちにおける避難訓練の最大の目的は次の通りです。

  • いかなる状況下でも保育士の指示をしっかりと聞いて、安全に避難できるようにすること

災害など想定外のことが起こると、誰でも冷静さを失ってしまうものです。大人でもパニックに陥ってしまう状況のなか、子どもたちが保育士の指示を理解し、安心して行動するためには「慣れ」が必要 です。最初は、怖がったり指示通り動けなかったりしても、訓練を繰り返していくうちに保育士の指示に落ち着いて従えるようになります。

「保育士の話を聞いて動く」ことをしっかりと意識して訓練に取り組んでもらうようにしましょう。

保育士にとってのねらい

保育士における避難訓練の目的は次の通りです。

  • 災害発生時に冷静な判断ができること
  • 適切な指示を出して子どもたちを安全に避難させること
  • 避難時の問題点を把握すること

子どもの命を預かる保育士には、いかなる状況下であっても冷静な判断力と的確な対応力が求められます。避難訓練を通して、どのような指示を出せば子どもたちが落ち着いて避難できるかをしっかりと確認しておくようにしましょう 。また、避難時の問題点を探り、より安全に避難できるよう改善に努めるのも訓練の重要な目的のひとつ です。

保護者にとってのねらい

保護者における避難訓練の目的は次の通りです。

  • 災害時に園と情報共有をスムーズに行えること
  • 子どもたちが家庭で災害に遭った場合も慌てずに避難できること

とくに、すべての子どもたちを安全に保護者へ引き渡すために、次のような情報を共有しておくことが重要です。

  • 災害発生時にどのような手段で連絡をするか
  • どこに避難するか
  • 引き渡しのルール 、など

また、電話回線などのインフラが遮断されてしまった場合の対策もしっかりと定めておくようにしましょう。

避難訓練の準備

地震や火災などの自然災害から、不審者侵入などの事件まで、さまざまな状況を想定した避難訓練が必要です。

たとえば、火災が発生した際には安全を確保したうえで室外へ避難することが大切。一方、台風や不審者侵入などが発生した際には、状況に応じて室内の安全な場所への非難が求められます。

あらゆる災害に対して的確に対応するためには、それぞれの災害・事件から想定できる危険を回避するための訓練を行っておくことが必須 。そして、避難訓練を実施するための事前準備の徹底が欠かせません 。そこでここからは、避難訓練のための事前準備について確認していきましょう。

計画とマニュアルの作成

避難訓練を効果的に行うためには、どんな災害を想定した訓練を行うかを記した年間計画表と災害時の避難手順や役割分担を記したマニュアル を作成しておくことが重要です。

年間計画表の作成

年間計画表は、想定される災害を明確にし、発生時間・発生場所・発生時の保育状況などを詳細に設定して作成します。それぞれの災害に対して、避難場所・避難訓練のねらい・留意点など、具体的な訓練内容を盛り込んでいきましょう。

【年間計画表の例】

日時

設定

保育状況

避難場所

ねらい

留意点

4

17日(金)

10:00

総合

保育室での活動

保育室

・避難訓練の意味を知る。

・避難場所を知る。

・避難の指示の意味を知らせる。

5

19日(火)

10:00

給食室で出火

保育室での活動

駐車場

・避難の指示を聞く。

・避難場所を的確に判断し、迅速に誘導する。

・火事の場合の対応方法を知らせる。

・消火器訓練

6

19日(金)

10:00

地震

ホールで誕生日会

保育室

・地震時の避難方法を知る

・地震でどんな状況になるかを知らせる。

・訓練に慣れが出ないよう声掛けをしながらすみやかに避難する。

・自宅にいた場合の話などもする

【参考】

美星保育園「平成31年度 避難訓練年間計画」

住吉南保育園「平成30年度 防災・防犯訓練 年間計画」

たきやま保育園「平成28年度 避難訓練計画表」

災害別のマニュアル作成

災害ごとのマニュアルを作成する際には、経済産業省が発行している『保育施設のための防災ハンドブック』や、各自治体から提供されている保育所用の災害マニュアルなどを参考にするとよいでしょう。

なお、マニュアルでは、災害発生時の保育士の役割分担(本部・誘導・安否確認・救護など)や対応方法などを明確に定め、マニュアル化しておくことが大切です。

防災グッズを揃えておく

避難先で最低限必要となるものをいつでも持ち出せるよう、避難用の防災グッズを揃えて、リュックなどにまとめておきましょう。リュックは、各保育室の持ち出しやすい場所に常に置いておくと安心です。また、薬や食品などは、年に1回程度消費期限を確認しておくとよいでしょう。

【災害別】避難訓練の方法

避難訓練の目的と事前の準備事項を把握したところで、ここからは実践編です。地震・火災・水害・不審者侵入の4つの災害・事件に対する訓練方法をみていきましょう。

なお、どの訓練を行う際にも大切になるのが「おかしもち」。

お…押さない

か…駆けない

し…しゃべらない

も…戻らない

ち…近寄らない

避難訓練の際には、子どもたちと一緒に確認しておきましょう。

地震訓練

日本はとても地震の多い国です。おもな地震の原因とされる活断層が日本には2,000ほどあると推定され、今後も幾度となく地震が発生すると予測されています。そのため、日頃の地震訓練が大切です。しっかりと訓練して、「もしも」のときに備えましょう。

なお、地震訓練で押えておくべきポイントは次の通り。

  • 落下物がなく、横から物が倒れてこない場所へ移動する
  • 窓・ドアを開けて出入り口を確保する
  • 火元を確認し、元栓を閉める
  • 防災頭巾を被せ、長袖の上着を着せる・靴を履かせるなどの準備をする
  • 状況に応じて、待機または避難の指示を出す
  • 人数の確認をする

地震発生時には、すみやかに机の下などへ身を隠すよう指示します。防災頭巾や上着、靴は落下物から身を守るために必要なもの。普段から、すぐに装着できる練習をしておきましょう。

また訓練中には随時、「窓から離れてね」「頭を守ることが大切だよ」と危険を回避するための指示や「先生はここにいるから大丈夫だよ」と子どもたちが安心できるような声かけをするとよいでしょう。

火災訓練

火災は起こさないよう十分に注意することが重要ですが、近隣からの出火も起こり得るため、やはりしっかりと訓練しておきましょう。なお、火災訓練で押さえておくべきポイントは次の通りです。

  • 火元を確認する
  • 子どもたちを安全な場所に集めて、外へ誘導する
  • ハンカチなどで鼻と口を覆って、煙を吸わないように指示する
  • 静かに早足で避難する
  • できるだけドアや窓を閉める

火災発生時には、すみやかに火元を特定し、避難経路を確保することが大切です。子どもたちを火元からできるだけ離れた場所へ避難させましょう。

また、火災で発生した有毒ガスや高温の気体を吸い込んで人命が奪われるケースも多く発生しています。子どもたちが煙を吸わないよう、避難時にはハンカチやタオルを鼻と口にあてるよう指示してください。

水害(台風・洪水)訓練

台風や大雨による水害は、事前に想定できるケースがほとんど。常に台風情報や天気予報をチェックし、通過や接近の可能性が高い場合にはあらかじめ対策しておくことが重要 です。状況によっては早めに保護者に連絡し、安全なうちに子どもたちを引き取ってもらいましょう。

なお、近年多いのが大雨による洪水。自治体のハザードマップを事前に確認し、園周辺の浸水・洪水情報を把握しておくことも大切。万が一のときに避難する場所や危険な場所をピックアップしておくと安心です。

不審者侵入訓練

送迎時に保護者のなかに紛れこんだり、園庭の塀を乗り越えたりと、不審者侵入はどこでも起こりうる事件です。万が一の際の被害を最小限に抑えるため、不審者侵入訓練もしっかりと実施しておきましょう。警察や自治体と協力して、犯人役を演じてもらうのも効果的です。

なお、不審者侵入訓練で押さえておくべきポイントは次の通りです。

  • 子どもたちを安全な場所へすみやかに避難させる
  • 保育士間で不審者情報を共有する

(※「不審者」と叫ぶと犯人を刺激してしまう恐れもあるため、内部での合言葉を決めておくのも良策)

  • 警察に通報、または近隣に助けを求める

また、「いかのおすし」などの覚えやすい標語を用いて、子どもたちに不審者に対する防犯の意識を持たせることも重要です。

いか…行かない

の…乗らない

お…大きな声で叫ぶ

す…すぐ逃げる

し…知らせる

子どもたちへの教え方のポイント

災害から身を守るために、とても重要な役割を果たす避難訓練ですが、子どもたちに災害の怖さや危険性、避難訓練の大切さを理解してもらうのはなかなか難しいものです。そこで最後に、防災と避難訓練の大切さを子どもたちへ効果的に伝えるポイントをご紹介いたします。

絵本や紙芝居を使う

防災がテーマの絵本や紙芝居 を使ってみましょう。災害の怖さを子どもたちへ伝えるには、写真やイラストなどで視覚的に訴えると効果的。 おすすめの絵本・紙芝居は下記のようなものがありますよ。

  • はなちゃんの はやあるき はやあるき

https://www.amazon.co.jp/dp/4265006345/

  • みんなでひなんくんれん

https://www.amazon.co.jp/dp/4494090948/

  • あわてない あわてない

https://www.amazon.co.jp/dp/4494079804/

  • ~ひなんするときのおやくそく~おかしもち

https://www.amazon.co.jp/dp/B086Z2WTYM/

絵本や紙芝居ならストーリーを通して、楽しみながら防災を学ぶことができるのもポイントです。

保育士が演技する

災害発生時のリアリティを伝えるため、保育士が演技をして伝えるのもおすすめ。 先生が園児役になり、突然災害に遭遇した場面を劇で演じます。危険を回避するためにどうすればよいかを子どもたちへ問いかければ、災害時の対処方法・避難方法を楽しく学べます。

まとめ

命を守るために重要な避難訓練。想定外の災害が発生した際、的確かつ冷静に対処するためには、子どもたちにとっても、保育士や保護者にとっても「慣れ」が必要です。 避難訓練を通して、起こり得るさまざまな災害・事件への対応力、安全に避難する力をしっかりと身につけていきましょう。

「もしも」のときに子どもたちを守れるのは保育士です。絵本や紙芝居などで防災の大切さを子どもたちに伝えながら、意識を高めて防災訓練に取り組んでみてください。

【参考】

経済産業省「保育施設のための防災ハンドブック」

京都市保育園連盟安全対策委員会「保育園防災マニュアルひな型」


「保育のひきだし」広報部 Twitter

保育士資格を持つ社員たちが、「保育のひきだし」の
最新情報や関連保育施設での出来事をツブやきます!

採用情報 あなたにぴったりの職場がきっとみつかる!

採用情報 あなたにぴったりの職場がきっとみつかる!

保育園、学童クラブ・児童館、小規模保育施設への就職・転職をお考えの方はこちらをご覧ください。

  • 新卒採用 詳しくはこちら新卒採用 詳しくはこちら
  • 中途採用 詳しくはこちら中途採用 詳しくはこちら

手作りおもちゃ特集

No.1098 ころりんマラカス

手作りの網で戸外活動を楽しみましょう。

ページトップに戻る