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保育士のひきだし

2020.09.10

保育士の処遇改善手当は給料が上がる新制度?仕組みやキャリアアップ研修も紹介

他業種と比べて給料が少ないと言われている保育士。ですが、最近は国や各自治体で保育士を確保するために、保育士の待遇の改善を行っています。保育士の待遇が良くなる処遇改善手当ですが、研修を受けてキャリアアップを目指すもの、経験年齢に応じて対応するもの、各自治体独自のものとさまざまであり、わかりにくい部分が多いです。

今回は処遇改善手当について、仕組みや研修の内容などをご紹介いたします。

保育士の処遇改善手当ってなに?

他業種に比べて給料が安いと言われている保育士。離職率も高く、仕事の激務や給料が安いという理由で辞める保育士が後を絶ちません。そのため、国や自治体が保育士の処遇改善を進めることで、人手不足の問題を解決しようと考え、作られたのが、「保育士処遇改善手当」です。

2013年に「保育士処遇改善等加算」が作られ、年々内容が変更されており、2017年からは新制度である「技能・経験に応じた保育士等の処遇改善」がはじまりました。保育士の処遇改善により、年収アップが見込まれる他、新たな役職を設けることで、キャリアアップもしやすいように改善されています。

処遇改善には種類があるため、まずはそれぞれの内容についてご紹介いたします。

処遇改善等加算Ⅰ

処遇改善等加算Ⅰは国による処遇改善のため、全国で働く保育士に適応されるもの。処遇改善等加算Ⅰは、経験年数に応じた給与のベースアップや賃金改善を目的とされています。正社員として働く保育士だけではなく、パートやアルバイトといった非常勤を含む全ての保育士が対象です。

処遇改善等加算Ⅰは、基礎分と賃金改善要件分とに分かれており、基礎分に関しては1人あたりの平均経験年数に応じて加算率が設定されます。賃金改善要件分に関しては、賃金改善及び実績報告を提出し、基準年度から賃金改善を行っている施設に加算されるものです。

どちらの加算率も、個人ではなく施設ごとの対応になるため、同じ経験年数であっても、施設によって個人にもらえる額は変わってきます

処遇改善等加算Ⅱ

処遇改善等加算Ⅱは、処遇改善等加算Ⅰと同じく、国が行っている処遇改善です。処遇改善等加算Ⅱはキャリアパスと研修体制を構築することで、それを通して技能・経験を積んだ保育士に対する追加加算を目的としています。

保育園内で役職がある保育士といえば、「園長」と「主任」しか思い浮かばないという人も多いかと思います。役職が少ないため、長く続けても昇給やキャリアアップが見込めず、他業種に転職するといった離職率の高さにつながっていました。

処遇改善等加算Ⅱでは、園長、主任だけではなく「副主任保育士」「専門リーダー」「職業分野別リーダー」といった中堅役職を新設し、今まで離職していた中堅保育士の確保を目指しています。それぞれの役職に就くためには、必要な要件を満たし、都道府県が実施するキャリアアップ研修を受講することが必要になってきます。各役職の処遇加算の要件がそれぞれ異なるので、まとめてみました。

副主任保育士

  • 経験年数概ね7年以上
  • 職務分野別リーダーを経験
  • マネジメント+3つ以上の分野の研修を修了
  • 副主任保育士としての発令

専門リーダー

  • 経験年数概ね7年以上
  • 職務分野別リーダーを経験
  • 4つ以上の分野の研修を修了
  • 専門リーダーとしての発令

副主任保育士、専門リーダーに該当する加算対象者の1/2は確実に月額4万円の処遇改善を行い、残額はその他の職員に月額5千円以上4万円未満の範囲で配分可能となっています。

職業分野別リーダー

  • 経験年数概ね3年以上
  • 担当分野の研修を修了
  • 修了した研修分野に係る職務分野リーダーとしての発令

職務分野リーダーに該当する加算対象者に月額5千円の加算。※副主任保育士等への一番低い加算額を超えない範囲

【参考】厚生労働省|保育士のキャリアアップの仕組みの構築と処遇改善について

自治体独自の処遇改善手当

国が行っている保育士等処遇改善等加算だけではなく、自治体独自で行っている処遇改善もあります。各自治体によって内容は異なりますが、例として挙げていきたいと思います。

東京都大田区

区内の私立保育園に常勤で6ヶ月継続勤務している保育士に、月額1万円(年に2回、6万円ずつ)が支給されます。

【参考】おおた ほいく・ぽ~と

東京都江戸川区

区独自の補助(1万円相当)と東京都キャリアアップ補助(4万円相当)を合わせて月額最大5万円相当を給料に加算。※支給額や支給方法は、保育事業者により異なります。

また勤続5年に達した翌年度に10万円の報奨金を支給しています。※常勤の保育士等として正規に採用された保育士が対象。さらに就職祝品として、区内共通商品券5万円分のプレゼントもあります。※令和2年度採用者まで

【参考】江戸川区ホームページ

千葉県柏市

一人あたり月額40,000円~43,000円を補助。なお、43,000円のうち、40,000円については、対象者人に給与(手当)として毎月支給。差額の3,000円については、園の裁量により、対象者又は対象者以外の者に支給可となっています。

【参考】はぐはぐ柏

千葉県松戸市

正社員として就業している保育士を対象に、経験年数に応じて45,000円~72,000円を個人に支給。また松戸市内で保育士として働く方のお子さんの保育所の入所が優遇されます。さらに育休からの復帰に際し、子どもの保育料が最大27,000円(月額費用)免除されたり、10年勤務した保育士には市長からグルメカード3万円分の贈呈もあります。

【参考】まつどDE子育て

埼玉県戸田市

2018年度~2022年度の5年間、対象の保育士さん1人につき年間20万円が本人に全額支給されます。

【参考】戸田市情報ポータルサイト

他にも、多くの自治体で、借り上げ社宅制度と呼ばれる住居費の補助や、保育士資格取得のための資金を貸付する制度を取り入れています。働こうと思っている自治体ではどのような制度をとりいれているか、確認してみてください。

キャリアアップ研修ってなに?

最大月額4万円の加算が見込まれる「処遇改善等加算Ⅱ」ですが、支給されるためにはキャリアアップ研修の修了が必要となります。キャリアアップ研修はどこで行われているのか、どのような内容なのか、詳しく見ていきたいと思います。

キャリアアップ研修の内容

キャリアアップ研修は、正式名称を保育士等キャリアアップ研修と言います。専門分野別に6つ、マネジメント研修、保育実践研修の、合わせて8つが用意されています。

  • 乳児保育:0~3歳未満の乳児の保育方法、指導計画など
  • 幼児保育:3歳以上児の保育、小学校への接続方法など
  • 障がい児保育:障がいへの理解、環境設定、配慮など
  • 食育・アレルギー:栄養に関する基礎知識、アレルギー疾患についての理解など
  • 保健衛生・安全対策:事故防止及び健康安全管理、保育所における感染症ガイドラインなど
  • 保護者支援・子育て支援:保護者に対する相談援助、虐待予防など
  • マネジメント研修:マネジメントの理解、働きやすい環境設定など
  • 保育実践研修:具体的な環境設定、遊びの内容など

新設される役職

キャリアアップ研修を受けることで、新たに新設された役職に就くことができます。こちらは「処遇改善等加算Ⅱ」でも紹介しましたが、「副主任保育士」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」の3つ。役職ごとに概ねの勤続年数や、受講する研修が異なってくるため、自分が該当するかは確認が必要です。

研修の受け方

保育士等キャリアップ研修を受けるためには、各都道府県で指定している研修実施機関に申し込みを行う必要があります。個人での申し込みではなく、勤務先の保育園がまとめて申し込む形になっているため、希望者したから受けることができるというわけではありません。研修自体も定員は決められており、受講できる人が限られています。

キャリアアップ研修は、正社員だけでなく、条件を満たしていれば契約社員やパート社員、派遣社員も参加することができます。まずは研修を受けたいという思いを、しっかりアピールしておきましょう。

研修の注意点

キャリアアップ研修は給料の改善が見込まれるだけではなく、保育士としてもスキルアップすることができるため、受講したいと考えている人は多いかと思います。しかし個人で申し込むことができないため、保育園によっては研修を受けさせてもらえないことも。キャリアアップ研修を受けるための人員の余裕が無かったり、外部での研修を認めていなかったりする保育園もあるので、予め確認するようにしましょう。

また、最低でも15時間以上の講習となるため、2~3日間の日程を組んでいる事がほとんどです。途中の研修を休んでしまうと修了証がもらえないため、最後まで研修を受けることができるように事前に調整しておきましょう。

処遇改善手当は本当にもらえるの?

保育士としてのキャリアアップや給与のアップが見込める処遇改善手当。処遇改善手当がもらえない場合もあるのか解説いたします。

加算額は園によって異なる

処遇改善等加算はⅠとⅡの2種類がありますが、配分方法がそれぞれ異なります。

「処遇改善等加算Ⅰ」の場合は、基礎分と賃金改善要件分で配分方法が異なっており、基礎分は個人の基本給や手当に充当する形で加算されますが、賃金改善要件分については、同じ事業所内であれば他の職員にも充当することが可能となっています。

「処遇改善等加算Ⅱ」も、副主任保育士と専門リーダーは月額4万円、分野別リーダーは月額5千円の加算となっていますが、加算対象者の半数に月額4万円が支給されているのであれば、その他の保育士に対しては月額5千円~4万円の範囲で分配することが可能です。

そのため、研修を終えて特定の役職に就いたとしても、必ず4万円が加算されるとは限りません。保育園によって対応は異なってくるので、自分の働いている保育園ではどのように考えられているのか、確認しておきましょう。

保育園によってはもらえなかった事例も

国が交付している処遇改善等加算は、まず運営母体に加算額が公布されます。そのため、残念なことではありますが、適切な賃金の改善が行われず、保育園の運営資金として使用している場合もあるようです。

2020年1月には、会計検査院が6000か所の施設を調査したところ、660の施設で7億円以上の金額が賃金の上乗せに使われていないという実態が明らかになっています。

【参考】保育士の処遇改善交付金約7億円が賃金上乗せに使われず 不透明な経営実態明らかに

まとめ

今回は保育士の処遇改善手当、キャリアアップ研修についてご紹介いたしました。処遇改善等加算のしくみや特徴を理解することで、処遇の改善や、キャリアアップにつながります。保育士として仕事をする上で、昇給はモチベーションのアップにもつながります。

加算の種類が多く内容も複雑ですが、自分は対象かどうか、まずはチェックしてみてください。


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