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保育士のひきだし

2019.07.12

障害を持った子の保育を担当する「加配保育士」。園での役割や仕事内容は?

「加配」という言葉からも分かるように、規定の保育士人数にプラスして配置される加配保育士。その役割は一般の保育士とは異なります。障害を持った子どもが、支障なく保育園生活を送るための手助けをするという役割を担っているのです。

 

障害の種類や度合いは子どもによってさまざまですので、一般の保育士以上に子ども一人ひとりに寄り添った保育が求められます。そのためには、一般の保育士とは異なる仕事内容や知識が必要なことも。

 

加配保育士を目指すときに、知っておきたい仕事内容や役割をご紹介いたします。

 

加配保育士とは

 加配保育士とは、障害を持った子どもが支障なく保育園生活を送るために、個別の配慮を行い生活を手助けする保育士です。

 

子どもたちが集団生活を送る保育園。その中には、障害を持つ子どももいます。障害の度合いにもよりますが、障害を持っていても支援制度が整っていれば、集団生活を送ることが十分に可能です。しかし、他の子どもと同じように全ての活動を行うことは難しい。そんなときに、子どもに寄り添った援助を行うという役割を担っています。

 

また、一般の保育士が障害を持つ子どもの援助を行うことによって、他の園児への保育が滞ることも。そんな状況を防ぐためにも、加配保育士は必要なのです。

 

障害児保育においての加配保育士の規定は、明確には定められていませんが、おおむね子ども2名につき1人の加配保育士を水準として配置することとされています。対象となる子どもは、障害の診断を受けている子どもが基本。保育園側や保護者からの申請を受けて、配置をします。

 

【参考】厚生労働省 保育課関係 (8)障害児保育の推進について

 

しかし、各自治体に委ねられている部分も多く、子ども3人につき加配保育士1人、もしくは明確な基準は設けていないという自治体も少なくありません。

 

障害の度合いによっても必要な援助が異なるので、一概に規定人数が定められないという背景もあります。

 

加配保育士になるには?

 加配保育士になるためには、一般の保育士とは違った知識や配慮が求められる部分も少なくありません。加配保育士になるために必要なことを見ていきましょう。

 

保育士資格が必須

 加配保育士になるためには、保育士資格が必要です。一般の保育士にプラスして配置されることから、保育補助と混合されることもありますが、資格がなくても働くことができる保育補助とは違います。

 

保育士資格を持っていれば、その他に必須となる資格はありません。保育士資格を取得するためのカリキュラムの中に、障害児保育についての項目も含まれています。保育士資格を持っているということは、障害児保育についての知識も持っていると見なされるのです。

 

障害に対する正しい理解と知識を身に付ける

 保育士資格取得の中で障害児保育についての勉強をしていても、全ての障害について学べるわけではありません。障害の度合いや種類は子どもによってさまざまです。障害によって、関わり方や援助の仕方は全く変わります。

 

例えば、自閉症の子どもの援助では、難しい部分を手助けするという関わりが正しいとは限りません。強いこだわりを持つという特徴もある自閉症。決まったルーティーンを崩されるとパニックに陥ることも。できないからと言って手助けをしてしまうことは、適切な援助ではないのです。ルーティーンにこだわりがある障害を持つ子どもに対しては、「待つ」ことが何よりも大切な場面もあるのですよね。

 

障害に対する正しい理解と知識を身に付けるためには、障害についての本を読んだり研修に出席するなど、知識を得るための学びが必要です。

 

保護者の方のケアや配慮ができる

 

 

障害を持つ子どもの保護者は、子育てに対してマイナスに考えてしまったり落ち込むことも少なくありません。そんな保護者の方の気持ちをくみ取り、良き相談相手となることも加配保育士の大切な役割です。

 

また、子どもの障害を認めたくないという保護者の心理もあります。障害を認めたくないという思いから、診断を受けないケースも少なくありません。いわゆるグレーゾーンと呼ばれる子どもたちです。基本的には、障害の診断を受けた子どもに対して配置される加配保育士ですが、園生活に大きく支障をきたす場合には、保育園からの申請で配置する場合もあります。

 

障害を持っていると認めたくないけれど、実際の園生活には支障をきたしている。これは子どもだけではなく、保護者の方にとっても辛い状況です。保育士は医師ではありませんので、障害の診断を行うことはできません。経験からある程度の障害が分かったとしても、考えられる診断名を伝えることはNG。保育園での様子や成長を丁寧に伝え、保護者の方の気持ちに配慮した関わりが大切です。

 

加配保育士の仕事内容

 一般の保育士とは異なる働きが求められる加配保育士。その仕事内容を見ていきましょう。

 

細やかな支援を必要とする子どもの手助け

 

 

障害を持つ子どもは、他の子ども以上に細やかな支援が必要です。まずは、子どもの障害や発達を把握することから始めましょう。同じ障害であっても、子どもによって様子や援助方法は異なります。

 

子どもの様子を把握した上で、食事や排せつ、着脱などの身の回りの援助。遊びの中での友達との関わりや集団活動での手助けを行います。特に集団活動の面では、担任の指示が通りにくい場合も多いので、分かりやすい言葉で個別に伝えるようにしましょう。

 

他の子どもと同じようにできることを目標とするのではなく、子どもに合わせた援助を行うことがポイントです。例えば、一つひとつの活動が設定された時間内に終わらなくても問題ありません。子どものペースに合わせて寄り添うことも、加配保育士の大切な仕事です。

 

他の子に危害を加えないよう見守る

 加配保育士は障害を持つ子どもの保育を行いますが、その子どもにだけ配慮するわけではありません。周りの子どもへの配慮も必要です。

 

例えば、自分の思いを言葉で伝えることが難しい子どもを担当している場合。友達との関係で思い通りにいかない時に、かみつく、引っかく、たたく、押すなどの、危害を加えてしまう可能性があります。強いこだわりを持つ子どもの場合、自分の遊びを邪魔されたことでパニックとなり、周りにある物を投げて他の子どもにけがをさせてしまうことも。そんな状況を防ぐことも加配保育士の仕事です。パニックに陥ってしまった時には、体全体で子どもを抱きしめて落ち着かせることもあります。

 

障害を持つ子どもだけではなく、周りの子どもへの影響を考えることも必要です。

 

個別のカリキュラムを作る

 

 

保育園では、月案や週案などでクラスごとの保育目標やカリキュラムを設定します。しかし、障害を持つ子どもは、その目標やカリキュラムを達成できないことも少なくありません。だからこそ加配保育士は、子どもに合った個別のカリキュラムを作る必要があります。

 

子どもの障害や発達に適したカリキュラムや目標を設定することで、園での生活はより充実したものとなります。周りの子どもたちと同じカリキュラムを達成することを目標にするのではなく、子どもに合わせた活動の中で発達を促すことができるように心がけましょう。

 

カリキュラムを作る時には、療育センターでの働きかけが大変参考になります。療育とは障害を持つ子どもの発達を促すための治療と教育です。保育園よりもより専門的な働きかけが期待できるため、保育園と並行して利用するケース少なくありません。療育センターを利用している場合には、どんな療育を受けているのかを保護者の方に確認しておくと良いでしょう。

 

集団活動が難しい場合には個別の活動を見守る

 保育園は集団生活ですので、加配保育士は集団活動にスムーズに参加できるような援助を行います。個別での声掛けもその1つですね。

 

しかし、声掛けを行っても皆と同じ活動ができなかったり、1人での活動を好む子どももいます。運動機能の発達段階において、活動内容が難しいことも。

 

そんな時には、無理に集団活動に参加させようとせずに、個別の活動を見守るようにしましょう。そういった個別対応ができることも、加配保育士を配置する理由の1つです。

 

加配保育士の役割

 一般の保育士とは異なる役割を担っている、加配保育士。その役割について詳しく見ていきましょう。

 

他の園児とのコミュニケーションをサポート

 

 

障害の種類によっては、他の園児との円滑なコミュニケーションが難しい場合もあります。そんな状況の中で、友達との関係作りのサポートをすることも加配保育士の重要な役割です。

 

言葉で思いを伝えるのが難しい場合には、代弁することで会話の橋渡しをします。相手の話すことを理解できないときには、分かりやすい言葉でゆっくりと伝えることでコミュニケーションをとることは可能です。

 

また、加配保育士がコミュニケーションのサポートをすることで、障害を持つ子どもがいじめにあう事態も防ぐことができます。

 

障害のありなしに関わらず、「友達」としての関係を築けるように、子どもの立場に立ったサポートを心掛けましょう。

 

子どもとの信頼関係を築く

 障害を持つ子どもの中には、人との信頼関係が築きづらい子どももいます。反対に、人との距離感がつかめずに、相手へのボディタッチが多かったり距離が近い子どももいるのです。

 

そんな子どもの姿を受け入れ、子どもにとって安心できる存在としての信頼関係を築くことも、加配保育士の役割です。

 

そのためには、ゆっくりとした話しかけや子どもの好きな遊びを一緒に楽しむことも効果的。不安になったりパニックになった時に、「この先生がいるから大丈夫」と子どもが安心できる存在を目指しましょう。

 

保護者の方に保育園での様子を報告

 障害を持つ子どもの保護者は、保育園での生活に不安を抱えています。

 

そんな保護者の方の不安を軽減するためには、保育園での様子を丁寧に伝えることが1番です。

 

  • どんな活動をして、どんな反応があったのか
  • 身の回りのことで、できるようになったことや援助方法について
  • 友達との関わりについて
  • 園生活の中で楽しんでいた様子

 

保育園での生活の様子を詳しく知ることで、保護者の方の不安はなくなっていきます。特に、楽しんでいたことやできるようになったこと、友達と一緒に遊んでいた様子は詳しく伝えられると良いですね。

 

保護者の気持ちが安定することで、子どもの様子が落ち着いてくることもありますよ。

 

福祉や行政機関との連絡窓口

 障害児保育を実施する園では、保健所や保健センター、発達支援センターとの連携を行っている場合も多く見られます。また、自治体からの支援として、障害児保育専門の職員が各保育園を巡回する場合も。加配保育士には、この様な外部の福祉や行政機関との窓口となるという役割もあります。

具体的には、子どもの様子を行政機関に伝えるために個人記録を作成したり、巡回の職員へ子どもの様子を実際に見てもらうことで、より適切な子どもへの働きかけの指導を受けることも。指導内容は加配保育士だけではなく、一般の保育士も知っておく必要がありますので、一般の保育士への周知も行います。

 

子どもにとってより良い環境を作るために、保育園だけではなく行政の支援を受け、その窓口となることも加配保育士の大切な役割です。

 

まとめ

 障害を持つ子どもが集団生活を送る場合には、子ども自身も保護者の方も不安や困難を抱えています。そんな子どもと保護者の気持ちに寄り添い、支援を行うのが加配保育士です。

 

加配保育士の支援を受けながら集団生活を送ることで、子どもは多くのことを身に付け、学んでいきます。障害を持つ子どもが自分の支援によって、楽しく園生活を送っている姿が見られることは、大きなやりがいにつながりますよ。

 

仕事内容や役割を理解した上で、加配保育士を目指すことも、保育士としての働き方の選択肢に加えてみてはいかがでしょうか?


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