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保育士のひきだし

2020.02.28

保育指針とは?2018年に改定された保育指針をわかりやすく解説

保育園の基本となる考え方や保育内容が示されている「保育所保育指針」。全ての保育園では、保育指針を元に、保育理念や保育計画を考案します。保育指針は、2018年に10年ぶりに大幅に改定されました。大幅な改定の背景には、社会状況の変化のなかで保育所の持つ役割がさらに重視されるようになったことにあります。保育士なら保育所保育の基本である保育指針を理解しておくべきです。保育指針の役割とその内容。そして、2018年の改定野ポイントを詳しく解説いたします。

保育所保育指針とは何か

まずは、保育所保育指針の持つ役割とその内容についてご紹介いたします。

保育の基本的な考え方と運営の定義

保育所保育指針とは、保育の基本的な考え方やねらい、保育内容と運営に関することを定義しています。各保育園では、それぞれ異なる保育理念や保育方針があります。しかし、子どもたちの安全を守り、一定水準以上の保育を行うために基準となるのが保育所保育指針。だからこそ、保育園の運営者や保育士は、保育所保育指針を理解している必要があります。

2018年に10年ぶりに改定

保育所保育指針は1965年に策定されて以来、何度か改定されてきました。2018年の改定は、2008年の改定以来10年ぶりの大幅な改定です。2018年に改定された背景には、保育をめぐる社会状況の変化が大きく関係しています。共働き家庭の増加による、保育園利用の増加もその1つです。

乳幼児から保育園を利用する家庭が増えたことにより、3歳未満児の保育について具体的に示されることとなりました。また、2015年に施行された、「子ども・子育て支援新制度」も保育所保育指針の改定に大きな影響を与えています。全ての子どもに質の高い教育と保育を提供するという目標のもと施行された、子ども・子育て支援新制度。2018年の保育所保育指針においても、保育所を教育施設と位置付け、幼児教育の必要性が明確化されました

5つの領域(健康・人間関係・環境・言葉・表現)

保育所保育指針では、子どもの育ちのねらいを5領域で示しています。5領域とは、子どもの発達を「健康・人間関係・環境・言葉・表現」の観点からとらえたものです。いずれも子どもが健やかに育つためには重要な領域です。保育士はこの5領域を意識して、保育カリキュラムを計画し、子どもの育ちを支えます。それぞれのねらいを見ていきましょう。

  • 健康…心身の健康の確保を行い、子ども自身が健康と安全な生活を作り出す力を養う
  • 人間関係…周囲の人と関わり、支え合って生活する力を養う
  • 環境…周囲の環境に好奇心や探求心を持ち、生活に取り入れる力を養う
  • 言葉…経験や思いを言葉で表現し、相手の言葉を聞こうとする力を養う
  • 表現…感じたことを表現し、豊かな感性や創造性を養う

保育カリキュラムを作成するとき、目標や活動がどの領域に当てはまるのかを意識すると、活動がより充実したものとなるでしょう

2018年の改定のポイント

2018年の改定には5つのポイントがあります。詳しくご紹介いたします。

0歳~3歳未満児の保育が具体化

共働き家庭の増加などの理由から、0歳児から2歳児の保育所利用は年々増えています。012歳児は心身の発達の基盤を作る大切な時期。特に身近な大人との密な関わりが大きな意味を持ちます。日中の長い時間を保育園で過ごす012歳児にとって、保育士は保護者の方の次に身近な大人であり、関り方がその後の発達に大きな影響を与えるのです。

2018年の改定では、乳児・1歳以上3歳未満児・3歳以上児の各時期に分けて、ねらいや内容を示し、0歳~3歳未満児の保育を具体的に分かりやすく提示しています

保育園を教育施設として位置づけ

保育園は養護を行う場所、幼稚園は教育を行う場所というイメージがいまだありますが、保育園では養護と教育の両方を行っています。2018年の改定では、保育園も幼稚園や認定こども園と同じく、教育施設であると位置づけられたことが大きなポイントです

幼児教育とは、読み書きだけではありません。「知識及び技能の基礎」「思考力・判断力・表現力などの基礎」「学びに向かう、人間性など」この3つが、幼児教育の柱としています。教育施設という認識を持ち、子どもの資質を伸ばす保育計画の立案や関わりを意識するといいでしょう。

子どもの健康と安全の配慮

保育園に通う子どもたちの健康状態や発育状況に気を配ることは保育士の大切な仕事です。食物アレルギーもその1つ。子ども一人ひとりに合わせた援助や対応が求められるのです。

また、子どもたちは自分で自分の身を守ることが難しいので、保育士が園内での事故防止に十分配慮しなくてはいけません。2018年の改定では、食物アレルギーや保育所内の事故防止などの健康と安全の配慮が明記されています。さらに東日本大震災を教訓に、自然災害に対する危機管理体制づくりも推進されています

子育て支援の重要性をまとめた

2008年の改定では、「保護者に対する支援」についての記載が設けられましたが、2018年に、「子育て支援」と改められました。「保護者」は保育園を利用する家庭であるのに対して、「子育て」は子どもを育てている全ての方への支援です。この改定には、子ども・子育て支援新制度の施行も大きく関係しています。地域の関連機関や団体と連携し、地域に開かれた子育て支援の実施が必要です。

職員のキャリアパスの方向性を示した

保育園の役割が拡がるにつれ、保育士の質の向上が求められています。質を向上させるためには、研修会などで知識を得ることで、必要な力を身に付けていくことが重要です。2018年の改定では、研修計画の作成や、厚生労働省が定めた「保育士等キャリアアップ研修ガイドライン」の活用を推進しています。

改定により保育士に求められる内容

保育所保育指針改定により、保育士に求められる保育内容にも変化がありました。その1つが、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を意識した保育です。幼児期の終わりとは、保育園を卒園し、小学校に入学するまで。それまでに、発達に合った援助を行い、指導をする必要があります。

10の項目がありますが、達成目標ではないということを忘れないでください。子ども一人ひとりの個性に合わせた関りが求められます。

「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」について見ていきましょう。

「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」10

健康な心と身体

子どもは保育園の安心できる環境の中で、自分のやりたいことを見つけて思い切り身体を動かし、充実感や身体を動かす気持ちよさを知ります。また、生活のルールを身につけ、見通しをもって行動できるようにもなるのです。これらの積み重ねの中で、繰り返し挑戦したり、健康や安全を守るための行動も分かってきます。

保育士は、子どもが主体的に活動できる環境を作り、自分たちで生活を作り出しているという実感が持てるような関わりを心がけましょう。

自立心

自立心は、保育士や身近な大人との信頼関係を基盤として育まれます。身近な大人との信頼関係をもとに、子どもは安心して主体的に行動したり、自分の力を発揮できるのです。また、信頼できる保育士に見守られ支えられることで、最後までやり遂げる力も身につけていきます。やり遂げた達成感を経験した子どもは、失敗してもあきらめずに挑戦し、自信を持って行動できるようになります。

保育士は、子どもが自分で考えて行動できるようなゆとりある保育を行うとともに、クラス全体で認め合う雰囲気を作ることも大切です。

協同性

子どもは友だちとの関わりの中で、互いに思いを伝えあい、共通の目的の実現のため協力することを経験をします。その中で、協力することや相手への思いやりを学んでいくのです。ときには、うまく相手に思いを伝えられないこともあります。保育士は子どもの考えを受け止め、さまざまな状況を予測しながら手助けすることが大切です。

道徳性・規範意識の芽生え

友だちとのさまざまな体験の中で、子どもはよいことや悪いことを理解していきます。また、ときにはぶつかり合うことで、自分自身の行動を振り返り、相手の立場に立った行動も身につけていくのです。楽しく遊ぶためにはどうしたらよいのかを自分たちで考え、ルールを守る姿も見られるようになります。

子ども同士の気持ちのぶつかり合いが生じたときには、ともに考えながら援助を行うことで、道徳性や規範意識の芽生えを育てていきましょう。

社会生活との関わり

保育園は、子どもが初めて経験する社会生活です。保育士との関りから、クラスの友だちへ。クラスから保育園全体へ。保育園から地域の社会へと子どもたちの関わりは広がっていくのです。保育士は、子どもが相手や状況に応じて行動しようとする姿を、大切に育んでいく必要があります

思考力の芽生え

思考力の芽生えは、身近なものへの好奇心から始まります。好奇心を持つことで、気付いたり、考えたり、もっと面白くなる方法を工夫したり…身近な環境との関わりをより楽しめるようになるのです。

また、自分とは違う考えがあることに気付き、自分の考えをよりよいものにしようとします。保育士は、子どもの好奇心や探求心を引き出せるような環境設定を行い、子どもの考えを受け止め、新たな考えを引き出せるような声掛けや関わりが大切です。

自然との関わり・生命尊重

子どもの頃の自然との触れ合いは、身近な自然への親しみを深め、命あるものをいたわる気持ちを育みます。自然に触れて感動する経験や自然の変化の気付きから、さらに自然に興味を持って関わるようになるのです。保育士は、子どもが十分に自然に触れられる環境を作るとともに、命あるものを大切にする気持ちの育みをサポートする必要があります。

数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚

子どもは遊びや生活の中で、物の数や図形、文字などへ興味を持ち始めます。物の数を数えたり文字と出会うことで、子どもの遊びはさらに広がり、数字や文字の必要性を感じるようになるでしょう。もっと知りたいという関心につながります。保育士は、子どもの関心を促し、園内でも数量や文字に親しめるような環境作りが大切です。

言葉による伝え合い

保育士や友だちとの関わり、絵本との出会いによって、子どもはさまざまな言葉を習得します。同時に、言葉を使い相手に自分の思いを伝え、相手の話も聞く「伝えあい」も身につけていくのです。言葉による伝えあいを楽しむためには、相手に伝えたくなるような経験や、相手の気持ちを知りたいという思いを持つ必要があります。保育士は、状況によって言葉を付け加えるなど、子ども同士で話が伝わるような援助が大切です。

豊かな感性と表現

豊かな感性と表現は、美しいものや心動かされるものとの出会いで育まれます。その出会いがイメージを豊かにし、さまざまな表現を楽しむようになるのです。自分の気持ちを声や表情で表現し、保育士や友だちと共有することで、動きや音、演じて表現することの喜びを味わいます。保育士には、一人ひとりの子どもが表現する楽しさを大切にするとともに、イメージやアイデアが生まれる環境作りが求められます。

まとめ

2018年に改定された、保育所保育指針について解説いたしました。保育所保育指針は、子どもがよりよい環境の中で育つための基本です。だからこそ、保育に携わる方は、子どもの育ちのために保育指針を理解する必要があるのです。また、保育指針は保育に迷ったときに、大きな力となってくれます。社会状況に合わせて改定されたことで、より子どもとの関わりや援助がわかりやすく示されていますので、ぜひ手元に置いて保育所保育指針を活用しましょう。

【参考】厚生労働省 保育所保育指針

厚生労働省 保育所保育指針解説 平成 30 年2月

 


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