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2026.05.14

虐待の疑いに気づいたら?保育士として子どもと家庭のためにできる対応

保育現場において、子どもや保護者の様子から「虐待かもしれない…」と気づいたときの対応方法に悩む保育士の方は多いでしょう。保育士という立場で、子どもと家庭の両方に関わるからこそ、判断に慎重になりますよね。

この記事では、虐待の種類や気づきやすいサイン、対応方法を整理しました。また虐待が疑われる際の通告の流れや家庭との関わり方についても合わせて解説していますので、ぜひ最後までお読みください。

見逃さないために知っておきたい!虐待の種類とサイン

虐待は、わかりやすい形で表れるとは限りません。子どもや保護者の小さな変化に気づくためには、まず虐待の種類や内容を知っておくことが大切です。

この章では、児童虐待防止法で定義されている虐待の種類と、保育現場で気づくきっかけになる子ども・保護者のサインを解説します。

虐待の種類

児童虐待防止法では、虐待を以下の4種類に分類しています。それぞれの特徴を知っておくと、日々の保育の中で家庭の違和感に気づきやすくなるでしょう。

 

種類 内容
身体的虐待  殴る・蹴る・激しく揺さぶるなど、子どもの体に外傷が生じる、または生じる恐れのある暴行
性的虐待 子どもへのわいせつな行為、または子どもにわいせつな行為をさせること
 ネグレクト 食事を与えない・極端に不潔にする・病気でも病院に連れて行かないなど、子どもの心身の成長を妨げる養育の怠り
心理的虐待 言葉による脅しや無視、きょうだい間での差別的な扱い、子どもの前で配偶者に暴力を振るう(面前DV)など

 

近年では、面前DVを含む心理的虐待の通告件数が増えている傾向があります。目に見えにくい虐待があることを日頃から意識しておきたいですね。

参考: 児童虐待の定義 こども家庭庁

虐待が疑われる子どものサイン

虐待が疑われるとき、子どもにはさまざまなサインが表れることがあります。普段の保育の中で、小さな変化として見えてくることも少なくありません。

たとえば、季節や活動に合わない服装が続いていたり、入浴している様子がなく強い体臭がしたりする場合は、家庭での養育状況を気にかける必要があるでしょう。また、不自然な場所のあざや傷、説明と矛盾するけがが繰り返し見られるときも注意が必要です。

また、表情や態度の変化もサインの一つです。大人の顔色をうかがう、甘えが激しくなる、スキンシップを嫌がるなど、子どもの様子にこれまでの様子と異なる姿がないかを観察すると良いでしょう。

虐待が疑われる保護者のサイン

虐待のサインは、保護者の様子から感じられる場合があります。保護者の言動や子どもとの関わり方に違和感が続くときは、家庭の状況に困難があるのかもしれません。

送迎時にいつもイライラしている、子どもへの言葉がけが厳しいなどの様子が見られるときは注意して気にかけたい場面です。また、子育ての疲れや孤立感が感じられる発言が続く場合も、保護者自身が助けを求めている可能性があります。

サインがみられても、すぐに虐待だと決めつけることは避け、気にかけて様子を見る必要があるとして、園内で情報を共有していきましょう。

虐待が疑われるとき、保育士には通告義務がある

子どもの虐待が疑われたとき、保育士には法律で定められた重要な役割があります。それが通告義務です。

子どもの命と安全を守るため、保育士の方が適切に行動できるよう、内容を正しく理解しておきましょう。ここでは、児童虐待防止法における通告義務の内容と、通告のタイミングや通告先についてお伝えします。

児童虐待防止法が定める通告義務

児童虐待防止法では、虐待を受けていると思われる子どもを見つけた場合、すみやかに市町村や児童相談所へ通告しなければならないと定めています。通告は保育士の方にとって責任が重大に感じられますが、通告は「告発」ではありません。

子どもと家庭を必要な支援へとつなぐための、最初の一歩になるでしょう。保育士からの通告が、家庭にとって助けを求めるきっかけになる場合も少なくありません。

参考:令和4年改正児童虐待の防止等に関する法律の概要  こども家庭庁

「疑い」の段階で通告してよい

「もしかして…」と感じたとき、確信がないまま通告してよいのか迷う保育士の方も多いのではないでしょうか。法律上は、虐待を受けたと思われる児童を発見した時点で通告の対象とされており、確実な証拠は必要ありません。

また、通告した内容が結果的に虐待ではなかったとしても、誠実に行った通告であれば責任を問われることはないので、「確証がないから」と通告をためらうよりも、気になった段階で関係機関に相談することが大切です。

通告先と「189(いちはやく)」の活用

虐待が疑われる場合の通告先は、児童相談所や市町村の福祉相談窓口です。園長・主任を通じて連絡するのが一般的ですが、緊急性が高い場合は園として保育士の方が直接連絡する場合も考えられるでしょう。

また、全国共通の児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」に電話すると、最寄りの児童相談所に自動でつながります。匿名でも相談でき、保育士だけでなく保護者自身が利用することもできるため、必要に応じて保護者にも案内してみてくださいね。

参考:児童相談所虐待対応ダイヤル「189」 こども家庭庁

保育士として虐待の疑いにどう対応するか

虐待が疑われる場面に出会ったとき、目の前の子どものために何ができるのか戸惑うこともあるでしょう。大切なのは、一人で抱え込まず、園としての対応につなげていくことです。

ここからは、保育士として落ち着いて行動するためのポイントを3つの視点から解説します。

1.一人で抱え込まず園内で共有する

虐待が疑われる家庭に気づいたときは、最初に園内で情報を共有することが重要です。担任が一人で抱え込むと、判断ができず対応が遅れる可能性があります。

子どもの様子や保護者の言動で少しでも気になることがあれば、主任や園長に伝えましょう。複数の目で見守ることが、虐待の早期発見と適切な対応につながります。

2.対応の流れ

園内での基本的な対応の流れは、担任 → 主任・園長 → 関係機関の順で進めるのが一般的です。担任が気づいた虐待のサインを主任や園長に報告し、園としての方針を固めたうえで、必要に応じて児童相談所や市町村などに通告・相談します。

緊急性が高いと判断される場合は、園長を中心に速やかに通告へ進む判断も必要です。一方で、まだ「気になる段階」であれば、まずは園内での経過観察や情報収集を続けていくケースもあるでしょう。園としての判断軸を共有しておくことが、緊急時でも落ち着いて対応できることにつながります。

3.記録に残す

気になる出来事があったときは、必ず記録に残しておくことが大切です。口頭での共有だけでは記憶が曖昧になりやすく、後から事実確認が難しくなる場合もあります。

また記録の際は、事実を客観的に書くことを意識しましょう。「いつ・どこで・誰が・どのような様子だったか」を具体的に記し、保育士の気持ちや感情は分けて書くようにします。あざや傷の場所・大きさ、保護者の発言など、後から関係機関と共有できるよう、まとめておくと安心ですね。

虐待が疑われる子どもとの関わり方

虐待が疑われる状況にある子どもにとって、園は家庭の外にある大切な居場所です。保育士の関わり一つ一つが、子どもの安心感や心の支えにつながっていきます。

以下では子どもと向き合う際に意識したい点を見ていきましょう。

園を安心できる居場所にする

虐待が疑われる子どもにとって、園が安心して過ごせる場所であることはとても大きな意味があります。家庭で緊張やつらさを抱えていても、園であたたかく迎え入れられることで、心が休まる時間ができるでしょう。

登園時には笑顔で子どもの名前を呼んで受け入れる、子どもの好きな遊びを一緒に楽しむなど、日々の関わりの中で「園は安心できる」と感じられる環境づくりをすることが大切です。特別なことをする必要はなく、いつもの保育を丁寧に続けることが子どもの安心の土台につながっていきます。

気持ちを受け止める声かけ

子どもが何かを訴えてきたときや、表情が暗いときには、まず気持ちを受け止める姿勢を大切にしましょう。「悲しかったんだね」「嫌だったんだね」と気持ちを言葉にすることで、子どもは「気持ちをわかってもらえた」と感じられます。

無理に話を聞き出そうとしたり、「なぜ?」と問い詰めたりすることは避けたい対応です。子どもが話したくなったタイミングで耳を傾け、子どもが話した内容は否定せずに受け止めていきましょう。

変化を注意深く観察する

日々の保育の中で、子どもの変化に気づける視点も大切です。表情・体調・遊びへの集中度・友達との関わり方など、普段の様子と比べて違いがないかを観察してみましょう。

変化に気づいたときは、その場の判断だけにとどめず、時系列で記録に残しておくことで振り返ることができます。継続して観察すると、子どもの現状をより正確に把握でき、必要な支援にもつなげやすくなるでしょう。

虐待が疑われる保護者との関わり方

虐待が疑われるとき、保護者を責めたくなる気持ちになることもあるかもしれません。しかし、虐待の背景には、育児の孤立や経済的な困難、保護者自身が抱える心の傷など、さまざまな要因があるといわれています。

この章では、保護者との関わりの中で意識したいことをお伝えします。

責めずに寄り添う姿勢

保護者と関わるときは、「責める」のではなく「寄り添う」姿勢を大切にしましょう。気になる行動が見られたとしても、保護者を一方的に否定すると関係が悪くなる可能性があり、家庭の様子がさらに見えにくくなってしまうことも予想されます。

「お忙しい中、いつもありがとうございます」「最近、お疲れではないですか」など、日常の声かけの中でねぎらいや関心を示すことが、信頼関係を築くきっかけになります。

孤立させないための声かけ

虐待が起きやすい背景の一つは、孤立した育児環境です。誰にも相談できない状況が続くと、心の余裕が失われ、子どもへの関わり方にも影響が出ることがあるでしょう。

送迎時の短い会話の中で、「最近どうですか」「困っていることがあればいつでも声をかけてくださいね」といった声かけを重ねることが、保護者にとっての安心感につながります。必要に応じて、地域の子育て支援センターや一時預かりなど、頼れる窓口を紹介することも保育士ができるサポートの一つです。

避けるべき対応

保護者と関わる際に避けたい対応があります。感情的に問い詰めたり、他の保護者の前で叱責するような対応は、保護者を追い詰め、園と家庭との関係を悪化させる原因になりかねません。

また、保育士が一人で抱え込み、独自の判断で家庭の事情に深く踏み込むことも避けましょう。園として組織的に対応することが、保護者にとっても保育士にとっても、大きな支えになります。

保育士の気づきが、子どもと家庭を守る力になる(まとめ)

保育士は、子どもと家庭の両方に日常的に関わる、重要な専門職の一つです。日々の保育の中での小さな気づきが、子どもの安全や家庭への支援につながる場面は少なくありません。

大切なのは、一人で抱え込まずに園内で情報を共有し、落ち着いて対応していくことです。また、子どもだけでなく保護者にも寄り添う対応をしていくことが、家庭を支える力になるでしょう。

一つ一つの気づきを大切に、子どもと家庭が笑顔になれるような保育を続けていきたいですね。


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