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おやこのひきだし

2023.05.31

シリーズ 身体障がいのある子どもたちと保育園生活 第6回(全12回)

執筆:株式会社Halu(乳幼児向けインクルーシブブランド IKOU運営)

対象:保育士、幼稚園教諭、保護者

身体障がいのある子どもたちの保育園生活における環境づくりや日常動作のサポートについてご紹介する連載の第6回目。今回は、今年の4月に特別支援学校の小学1年生になった息子を持つ母が、保育園生活を振り返って感じていることをお伝えします。

わが家の息子は、脳性まひという運動機能障害を持って生まれてきました。体の筋肉を自分の思い通りに動かすことができないので、7歳になった今でも歩いたり話したりすることはできません。でも、会話の内容を理解していて身振りや表情で自分の主張を表現したり、バニーホッピング(※1)や寝返りを駆使して自分の好きな場所に移動したり、障害があることを忘れてしまうくらい元気でやんちゃです。

息子は今年の4月、小学1年生になりました。
本来、保育園を卒園して小学校に入学することはおめでたいことのはずですが、親である私は卒園が本当に寂しくて、卒園式ではずっと涙が溢れて止まりませんでした。それくらいに、保育園という居場所や息子を見守ってくれた先生たちは、私たち家族にとって大きな存在だったのです。

息子を障害のある子どもたちのみが通う児童発達支援事業所(※2)ではなく保育園に通わせたかった理由は、両親ともに働くために必要という理由以上に、お友達との関わりの中で心身ともに成長してほしいという願いからでした。
そして、3年間の保育園生活を通して、身体が上手く使えなくても、大好きなお友達と一緒にいろいろな経験を重ねて、楽しいと思えることや出来ることがたくさん増え、想像を大きく超える成長を見せてくれました。それは、いつも工夫して環境を調整し、息子もお友達と一緒にあらゆる遊びや行事に参加できるようサポートしてくれた先生方のおかげです。



↑息子がどんな気持ちでお絵描きしたのか、いつも先生がコメントを添えてくれました

特に感謝をしているのは、話せない息子に対しても、いつでも「どうしたい?」と気持ちを尋ねて、それに寄り添ってくれたこと。話せなくても、状況を理解はしているしやりたいこともあるということを分かってくれて、他のお友達に対してと同じように接してくれました。時には絵カードを使ったりもしながら、「どうしたら気持ちを理解できるだろう?」ということを真剣に考えてもらえたことが、本当に嬉しく、頼もしかったです。



↑何をして遊びたいかを先生やお友達に伝えるために活用した絵カード

卒園式の練習中、身体のバランスを取ることが難しいためにみんなと同じ椅子に座ることができない息子は、床の上にマットを敷いて座る予定でした。でも、「みんなと同じ椅子に座りたいと言うので、支えながら座りますね」と先生が息子の気持ちを察してくれて、式では3年間ずっと側にいてくれた大好きな先生に支えてもらいながら、みんなと同じ椅子に並んで座って参加することができました。
名前を呼ばれて卒園証書を受け取り、誇らしげに証書を持った手を掲げて、先生に支えてもらいながら歩いて堂々とホールを一周する姿を見ながら、保育園生活を通して息子の中に芽生えた「みんなと一緒にやりたい!!できる!!」という何にでも挑戦する意欲やそれを支える自信が、息子のこれからの人生をきっと支えてくれると信じることができました。

障害のある子どもの成長はとてもゆっくりで、ともすれば見逃してしまいそうな小さな変化の積み重ねです。保育園にお迎えに行く度に、先生たちが「今日こんなことがありました!」とその日の出来事やお友達とのエピソードを嬉しそうに教えてくれることが毎日の楽しみで、家族以外にも、息子の小さな成長の一つひとつを見逃さずに、共に見守って喜んでくれる人たちがいることがとても心強く、私たち家族の心の支えになっていました。

小学生になった息子は、毎日楽しく学校に通っています。一方で、特別支援学校や放課後等デイサービスでは障害のある子どもたちとの関わりだけになってしまい、障害のない子どもたちと交流する機会が極端に少なくなってしまったことに対しては、親としてもどかしい思いもあります。保育園は、特別なニーズを持つ子どもたちも含め、子どもたちが一緒の体験を共有することができる貴重で素晴らしい場所だと、改めて感じずにはいられません。

さまざまなニーズを持つ子どもたちが小さなうちから共に過ごすことで、自然と多様性への理解が深まることは、インクルーシブな社会を作る上では欠かせない。そんな環境が、保育園を起点としてこれからの当たり前になっていくことを願ってやみません。

注釈

  • ※1 バニーホッピング:割り座及び両手を床につけた状態で、ウサギ飛びのように跳びながら移動する方法。
  • ※2 児童発達支援事業所:障がいのある子どもたちの身体的・認知的な機能を伸ばすための個別の療育を受ける施設

  • 「保育のひきだし」広報部 Twitter

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