保育のひきだし こどもの可能性を引き出すアイデア集保育のひきだし こどもの可能性を引き出すアイデア集

おやこのひきだし

2023.04.25

シリーズ 身体障がいのある子どもたちと保育園生活 第4回(全12回)

執筆:株式会社Halu(乳幼児向けインクルーシブブランド IKOU運営)

対象:保育士、幼稚園教諭、保護者

『お友達のチカラが息子にもたらした変化』

ひとりっ子の6歳の息子は重症心身障害児です。生後1ヶ月で診断がついた時に医師から言われたことは「息子さんは、一生歩けないし喋れません」でした。そして、その日から6年経った今現在も、息子は歩けないし喋れていません。未だに一人で座ることも出来ていません。でも、息子はこの3月に卒園するまでの2年間、幼稚園で沢山のお友達に囲まれて毎日ニコニコと楽しく生活していました。その姿は、生後1ヶ月の時には全く想像がつかない姿でした。今回は、そんな息子の幼稚園生活を通して感じた変化をご紹介します。
色々な経験をさせたいという思いがあり、年中から幼稚園に通わせましたが、最初は毎朝泣かれ、迎えに行くとぐったりとうなだれており、幼稚園に行かせたことは親のエゴだったのではないかと悩みました。ただ、先生たちが不安な私の気持ちを察して沢山話を聞いてくださったり、迎えに行くと、お友達たちが喋れない息子の代わりに幼稚園での様子を教えてくれて、もう少し頑張ってみようと1学期を過ごしました。
入園前は児童発達支援事業センター(※1)に通っていた為、大人との関わりがメインで同年代の子供との関わりが少なかった息子は、園でのお友達たちとの関わりに当初ストレスを感じていたようでした。しかし、先生方の配慮もあり、秋も終わりに近づいた頃にはお迎えに行くとニコニコと笑顔で楽しそうにしている事が多くなり、気がつけばお友達との関わりを楽しめるようになっていました。
自分で動けない息子は、完全に受身でお友達にされるがままな事も多く心配していましたが、いつの間にか、嫌な時は怒ったり泣いたりして自分の気持ちを表現できるようになり、先生を呼びたい時は、テーブルを叩いたり声を出したりして呼べるまでに成長しました。たくさんの子供たちに囲まれた環境が息子を成長させてくれたと感じた出来事の一つです。
そして、幼稚園生活で最も驚いた出来事があります。
教室ではSRC歩行器(※2)を使っていたのですが、なかなか前に進めずにいました。そんな中、年長の3学期に先生との何気ない会話の中で「最近歩行器ですごく前に進むようになりましたね〜!」と言われて、私は息子が歩行器で前に進むことが出来るようになった事を、卒園を前にして初めて知りました。自宅でも、リハビリでも、微動だにしない息子が、幼稚園だと自ら積極的に動いている事実に、ただただ驚くばかりでした。
一生無理かもしれないと思っていた歩行器での移動は、このインクルーシブな環境だったから成し遂げられたことの一つだったと実感しています。
『子どもは子どもの中で育つ』とよく言いますが、療育やリハビリでは得られない、純粋に子供の能力を引き出してくれる、お友達パワーと先生たちの寄り添いが、息子の障がいを超えたと思える、そんな出来事でした。



4月から小学校へ入学しますが、2年間の園での経験が今後の私たちの生活の基礎となり、沢山のキラキラした想い出は私たちを救ってくれる事と思います。
そして、多様なニーズを持つ子供たちがともに育ち合うことが当たり前のインクルーシブな社会が、もっと身近になることを願います。

注釈

  • ※1)児童発達支援センター:地域の障害のある児童を通所させて、日常生活における基本動作の指導、自活に必要な知識や技能の付与または集団生活への適応のための訓練を行う施設。
  • ※2)SRC歩行器:自力での歩行が困難であっても、体を前屈みの状態で支え、地面を両足で蹴ることで前進することができる歩行をサポートするための移動補助具。

  • 「保育のひきだし」広報部 Twitter

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