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まなびのひきだし

2018.03.07

保育所保育指針の改訂のポイント(その 9) 保育の環境

むっちゃん先生と学ぼう
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このコーナーでは、むっちゃん先生(無藤隆教授)が、保育・幼児教育の大事なポイントを分かりやすく解説します。一人でじっくり読むのもよし!研修の素材として、園やクラスのみんなと読むのもよし!様々な形でご活用ください。毎月1回(第1水曜日を予定)お届けします。読まなきゃ、損。差がつきますよ!

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こんにちは、無藤隆です。今月のテーマは、「保育所保育指針の改訂のポイント(その 9) 保育の環境 」です。

保育所保育指針
第1章 総則
2 養護に関する基本的事項
⑵ 養護に関わるねらい及び内容
イ 情緒の安定
(ア) ねらい
① 一人一人の子どもが、安定感をもって過ごせるようにする。
② 一人一人の子どもが、自分の気持ちを安心して表すことができるようにする。
③ 一人一人の子どもが、周囲から主体として受け止められ、主体として育ち、自分を肯定する気持ちが育まれていくようにする。 ④ 一人一人の子どもがくつろいで共に過ごし、心身の疲れが癒されるようにする。 (イ) 内容 ① 一人一人の子どもの置かれている状態や発達過程などを的確に把握し、子どもの欲求を適切に満たしながら、応答的な触れ合いや言葉がけを行う。 ② 一人一人の子どもの気持ちを受容し、共感しながら、子どもとの継続的な信頼関係を築いていく。 ③ 保育士等との信頼関係を基盤に、一人一人の子どもが主体的に活動し、自発性や探索意欲などを高めるとともに、自分への自信をもつことができるよう成長の過程を見守り、適切に働きかける。 ④ 一人一人の子どもの生活のリズム、発達過程、保育時間などに応じて、活動内容のバランスや調和を図りながら、適切な食事や休息が取れるようにする。

養護とは単に安全で健康に過ごせるようにすることに止まりません。それを基盤としながら、さらに子どもの情緒の安定へとつなげていきます。何より小さな子どもは心身は互いに密接につながり合っています。大人のように我慢し、耐えていくということはできないですし、体の不調がすぐに心に現れ、子どもが生き生きとしているかに関わってきます。情緒の安定とは子どもが安心してその場にいられることから始まります。保育所そして保育室(特にそこにいる、昼寝するなど)、トイレ、また子どもが好きで遊ぶ場所などで、緊張せずに不安なくいられるのかどうか。子どもは家庭から離れ、新しい場所だと特に、ここにいて大丈夫かと気持ちが不安定になっています。

そこにいても誰からも怒られない。もちろん危害をいつ加えられるかと心配しないでよいとなっていてほしいわけです。
子どもの安定した気持ちとはそういった否定的な感情で落ち着かないでいることから、ゆったりとして過ごし、穏やかな気持ちでいられることです。そうすると、少しずつ子どもはその気持ちを外に表し、表情が和らぎ、喜びや興味の感情を表すようになります。保育所ではいろいろな遊具が置いてありおもしろそうです。同年代の子どもたちもいて、一緒に過ごしてよいのです。興味を持ったものに触ろうとして怒鳴られることなどありません。もちろんたまたま危険なことをしていたら、保育士はそれを止めますが、それも素早く、でも穏やかに制止することでしょう。
子どもが主体的であるとは、やってみたいことをやってもよいという状況にいて、いろいろな意欲が沸きたつように生まれてそれをしようとすると、支えてくれる大人がいるところで安心して、やっていこうとできる状態から始まります。自己肯定感とは、自分がやってみたいと感じることはやってよいのだと感じ、そして手助けを受けながら、それを何とか実現できると感じることです。自分はこの場所にいてよいのだし、意欲を覚えたら、試みてよいという周りへの能動的な関わりを身の回りの人々から認められ、支えられることで生まれてきます。 そのために、一人一人への丁寧な対応が欠かせません。子どもが小さければなおさらそれぞれの個性や発達の違いは大きいし、また日々の体調の変動も大きいでしょう。子どもが日々、くつろいで過ごせるよう、睡眠や食事や遊びへの配慮を行い、そして子どもが指針をリフレッシュして、また周りへの興味や関わりが広がるようにしていきます。
そういった安定感、安心感、自己肯定感を保障し、育てていく営みが保育士の行う養護ということです。それは簡単なことではありません。保育士の専門性がそこにまさに必要とされるからです。 まず、一人一人ごとの様子を把握しますが、その背景としては、その年齢・月齢ではどういった発達が見られることが多いかを理解しておきます。そこで大事なことは平均にとらわれず、多くの子どもの育ちの幅や違いを知っておくことです。同時に、その子どもの日頃の様子を把握した上で、その日の調子を見定め、また登園時の姿などにも注意しておきます。
子どもの活動の一日の流れやリズムを大切にしましょう。どうしても大勢いるときに一斉にあるいは一律にやらざるを得ないこともありますが、できる限り、一人一人に応じて行きます。少し待ってやるなどの調整ができるだけでも子どもは落ち着きます。
子どもは活動的な時間帯とゆったりと過ごしたい時間帯とがあるものです。疲労に注意しながら休むときには休み、でも熱中できるときにはそれを支えます。
そこで子どもが何をしたいか、何を必要としているかについて、よく見たり、また耳を傾けたりします。言葉になることはもちろん、表情や仕草やちょっとした声の調子で分かることは多くあります。その欲求を満たすのはなるべく早く応じるべきことや少し待っていて良さそうなことを見分けながら、対応していきます。
保育士の関わりの中核は応答性にあります。子どもは常に自分が働きかけたことや自分の関わりに対して、返答があり、手応えが返ってきて、さらに共感や注意や賛同を求めています。それがあってこそ、さらに周りに自信を持って積極的に関わっていけるのです。子どもの視線、姿勢、表情、声、言葉に十分配慮しながら、子どもの関心の方向へと子どもを支えていきましょう。何も大げさな褒め言葉や応援は不要です。うなずき、ほほえみ、「いいね」と声を掛けることでよいのです。そして何か助力を求めていたら、一人ではとうてい無理なら手伝ってやり、多少のことでできそうならヒントを出し、という具合に関わります。
そのように子どもの意欲や不安を認め、受け入れながら、それを解きほぐし、関わろうとするところへと向けていき、支えます。そこから子どもからの信頼感が生まれ、少しずつ持続したものになっていきます。

そういう信頼関係が安定して育てば、そこから子どもは周りへの関心を大きく広げ、積極的にいろいろなことに興味を持ち関わっていくでしょう。そこに主体性の育ちの始まりがあります。それは、子どもがやりたくなってやる自発性から始まり、周りには何があるのか、そこでは何ができるかを探索することにと展開していきます。
子どもの世界が広がり、周りの世界を知っていくことにと発展するのです。子どもは自分がそこにいて、興味を持ったものに関わって、そこでおもしろいことや楽しいことを生み出されのだという自信を抱くようになります。そこから子どもの主体的な成長が始まります。保育士は常にその様子を見守り、必要があればいつでも関わり、手助けできるように用意をしているのです。そこに保育士の専門的援助の力量が現れるのです。

いかがでしたか?それではまた来月

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