保育士のひきだし
2021.01.06
【保育士の給料事情】平均月収は安い?給料を引き上げる方法を紹介
低水準だというイメージを持たれがちな保育士の給料。この記事では保育士の実際の給料事情が気になる方に向けて、保育士の平均月収は本当に安いのかをご紹介いたします。また、保育士の給料が安い理由についても取り上げ、保育士が給料を上げるためにできることも具体的に解説いたします。
全職種の一般的な平均月収・年収
厚生労働省の「平成28年賃金構造基本統計調査」の結果報告によると、給与所得者1人当たりの平均給与(年収)は490万円(男性549万円、女性376万円)という結果となりました。
【平均給与の内訳】
- 平均給与(年収)…490万円(男性549万円、女性376万円)
- 平均給料・手当(月収)… 41万円(男性46万円、女性31万円)
- 平均賞与(ボーナス)… 89万円(男性104万円、女性61万円)
つまり、上記の内容を分かりやすくかみ砕くと、全職種の一般的な平均月収は33万円ということになります。業種や性別、年齢によって差はありますが、大まかな目安として覚えておきましょう。
保育士の平均月収と年収は異業種よりも低め
保育士の平均月収・年収は異業種よりも低い傾向があります。ここでは、保育士の平均月収・年収のほか、手取りの金額、ボーナスや雇用形態による給与の差についてチェックしていきましょう。
保育士の平均月収は22万円、平均年収は327万円
厚生労働省の「平成28年賃金構造基本統計調査」によると、保育士の平均月収は22万円、平均年収は327万円であると報告されています。
【男女別・保育士の平均月収・年収】
全体の月収・年収 |
男性 |
女性 |
平均月収22万円 平均年収327万円 |
平均月収25万円 平均年収364万円 |
平均月収22万円 平均年収325万円 |
※平均月収に賞与(ボーナス)加算しない場合
※平均年収に賞与(ボーナス)加算した場合
※1,000円以下四捨五入
全職種の平均月収33万円、平均年収490万円と比較すると、その差は歴然です。
【保育士と全職種の月収・年収の差】
全職種(全体) |
保育士(全体) |
差額(全体) |
平均月収33万円 |
平均月収22万円 |
11万円 |
平均年収490万円 |
平均年収327万円 |
163万円 |
保育士は全職種と比較すると月収が11万円、163万円も年収が低いことが分かります。世間のうわさで「保育士の給料は低い」とよく聞きますが、それは間違いではありません。上記の月収・年収は手取り金額ではありませんので、実際に手元に残る金額はさらに少なくなります。
税金が差し引かれると手取り14万円前後
保育士の手取り金額は一般的に14~17万円だと言われています。社会人として働く上で、税金や保険料の支払いは義務です。総支給額から引かれる税金や保険料をまとめてみました。
【総支給額から引かれる税金・保険料】
- 所得税
- 住民税
- 健康保険料
- 介護保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
もちろん、運営元の会社や法人によって引かれる税金や保険料は異なります。ただ、多くの保育士は上記の税金や保険料の支払で、毎月4~5万円ほど引かれているケースがほとんどです。残業が多かったり、最終学歴が4年制大学だったりする場合、全体の給料がアップして手取り金額が増えるパターンもありますが、持ち帰り作業やサービス残業がある園の場合、手取り金額がなかなか増えない可能性も高いでしょう。
保育士の賞与(ボーナス)は平均59万円
厚生労働省の「平成28年賃金構造基本統計調査」によると、保育士の賞与(ボーナス)は平均59万円程度(平成27年賃金構造基本統計調査の「きまって支給する現金給与額」に12を乗じ、「年間賞与その他特別給与額」を足した金額)とされています。
一方で、全職種の平均賞与はおよそ89万円です。両者を比較すると、保育士は全職種よりもボーナスが30万円も低いという結果になります。5年で計算すると150万円、10年で計算すると300万円も差が出てしまいます。ただ、保育園の形態によってボーナスの金額は上下するので、保育士全員のボーナスの金額が低いというわけではありません。
【保育園の形態】
- 公立保育園
- 社会福祉法人が運営する私立保育園
- 株式会社が運営する私立保育園
- 認定こども園
- 認証保育園
- 企業内保育園
- 認可外保育園
- 院内保育
- 企業内保育園
公立保育園や認定こども園、院内保育園はほかの形態の保育園と比べると、ボーナスが高い傾向にあります。もちろん、保育園の規模や売り上げによってボーナスの金額に差は出てきますが、保育園の形態で園を選ぶと低給与の保育園が避けられるケースもあるでしょう。
正社員やパートなどの勤務形態によって給料は異なる
同じ「保育士」という名目であっても、勤務形態によって給料は異なります。
- 正社員
- パート
- アルバイト
- 派遣
パートやアルバイトの場合は時給1,000~1,200円ほど、派遣の場合は1,500円ほどに設定されている保育園が多い印象です。月収はシフト内容によって変わるので一概には言えませんが、フルタイムで勤務すれば正社員と同じ月収がもらえる可能性もあります。ただ、保険や税金が引かれない分、手取りは増えますが、扶養に入っていない場合は税金や保険料の払い込みを自分で行う必要があります。
派遣保育士の場合は社会保険に加入できるケースがほとんどなので、「正社員で働けないけど、フルタイムで勤務したい」「保険料の負担額が軽減したい」という方にはおすすめです。保育園によってはパートやアルバイトも一定の条件をクリアすれば社会保険に加入できるところもあります。給料と福利厚生、働き方を吟味して、自分に合った雇用形態を選びましょう。
保育士の給料が安い理由3つ
保育士の給料を引き上げている保育園もありますが、全体的に見ればまだまだ安いのが現状です。なぜ、保育士の給料は他業種よりも安いのでしょうか?ここでは、保育士の給料が安い理由を大きく3つご紹介いたします。
① 保育園の財源の大部分は補助金
保育園の財源は主に国や都道府県からの「補助金」と保護者の方からの「保育料」です。無認可保育園の場合は、補助金が受け取れないケースもありますが、認可保育園の場合は、運営に必要な保育料と保護者の方から受け取る保育料の差額分を自治体が負担しています。つまり、保育園はそもそもの利益が少ないシステムであることから、自動的に保育士の給料が低くなってしまうのです。
② 人件費を削っている保育園もある
限られた財源の中でギリギリの状態を強いられている保育園。中には、人件費を削減しているところもあります。通常であれば、運営費のうち人件費は7~8割は人件費に回すことが推奨されていますが、人件費を4~5割にとどめている保育園も少なくありません。
③ 現場での役職が少なく昇給が難しい
保育園では一般企業よりも役職が少ないという特徴があります。一般企業なら「リーダー職・係長・課長・部長」など細かく役職が分かれていますが、保育園では「一般保育士・主任・施設長」のほかに役職がない保育園が多い印象です。もちろん、フロアリーダーや専門リーダーなどの役職がある保育園も存在しますが、全体的には少ないので、昇給が難しい傾向にあります。
保育士が給料をアップさせる5つの方法
保育士が給料をアップさせるには、どんな方法があるのでしょうか?ここでは、保育士が給料アップのために実践できる5つの項目をご紹介いたします。
家賃補助住宅手当などを活用する
保育園の中には、家賃補助や自治体の支援が受けられるところもあります。家賃補助は、給料とは別に、家賃の一部を保育園や自治体が負担し、保育士本人の負担額が軽減される制度です。一方、住宅手当は保育園が従業員の保育士に支給する「手当」です。
どちらも保育士自身が支払う家賃の額を下げてくれる制度なので、非常にありがたい制度です。家賃補助の場合、保育園や自治体ごとに、物件が指定されていたり、入居期間が決められたりしている場合もありますが、家賃が浮いた分、手取り金額が増えるのはうれしいポイントです。
キャリアアップ研修制度を受ける
「保育士等キャリアアップ研修制度」とは、2017年に厚生労働省が制定した制度です。この制度では、一般保育士や主任保育士の間にさまざまな役職が追加されています。
- 副主任保育士(副主任保育士、中核リーダー)…月額4万円アップ
- 専門リーダー…月額4万円アップ
- 職務分野別リーダー(職務分野別リーダー、若手リーダー)…月額5,000円アップ
上記の役職の保育士は、勤務年数に加えて、自治体が定めた研修を受けることで、給料アップ(処遇改善)の対象となります。専門性を身に付けつつ、次のステップに進みたい保育士は、ぜひ研修を受けてみましょう。
【参考】厚生労働省「保育士のキャリアアップの仕組みの構築と処遇改善について」
ほかの資格を取得する
ほかの資格を取得するのも1つの方法です。
- チャイルドマインダー資格
- 絵本専門士
- リトミック資格
- 食育スペシャリスト
- モンテッソーリ教員資格
上記のような、保育にまつわる資格を取得すれば、スキルが評価されたり、専門リーダーにランクアップしたりするなど、給料アップにもつながります。
職場に許可を取って副業する
副業が可能な保育園であれば、副業で収入を得る方法もおすすめです。現在は自宅でできる副業がたくさんあるので、休みの日や平日の暇な時間に自宅で作業をするだけで収入が得られます。
【保育士におすすめの副業】
- ライター
- ピアノの先生
- 内職
そのほか、結婚式やパーティーなどのイベントで子どもを預かる「イベント保育」のスタッフや、ベビーシッターなど保育士資格を生かした副業を選んでもよいでしょう。ただ、保育園によっては副業が許可されていない場合もあるので、職場の就業規則をチェックしたり、上司に相談したりして、副業の許可を得てから始めましょう、
条件のよい保育園に転職する
どうしても給料を上げたい場合は、条件のよい保育園に転職するのもおすすめです。保育園の平均給与は低い傾向がありますが、中には給料の高い保育園もあります。東京都をはじめとする都市部では、地域手当がつく場合もあるので、働く場所にも注目して職場を決めてみましょう。
まとめ
保育士の給料は全職種と比べると、やはり低い傾向にありますが、給料を上げる方法はあります。家賃補助を利用したり、副業をしたり、転職をしたりすることで、給料アップが実現できるでしょう。自分に合った給料アップ方法を実践してみてください。