サクセス子ども子育て研究所

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保育所保育指針の改訂のポイント(その 11) 保育のカリキュラム

[むっちゃん先生と学ぼう] 投稿日時:2018/05/02(水) 10:23

むっちゃん先生と学ぼう
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このコーナーでは、むっちゃん先生(無藤隆教授)が、保育・幼児教育の大事なポイントを分かりやすく解説します。一人でじっくり読むのもよし!研修の素材として、園やクラスのみんなと読むのもよし!様々な形でご活用ください。毎月1回(第1水曜日を予定)お届けします。読まなきゃ、損。差がつきますよ!

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こんにちは、無藤隆です。今月のテーマは、「保育所保育指針の改訂のポイント(その11)保育のカリキュラム 」です。

保育所保育指針
第1章 総則
3 保育の計画及び評価
⑵ 指導計画の作成
ア 保育所は、全体的な計画に基づき、具体的な保育が適切に展開されるよう、子どもの生活や発達を見通した長期的な指導計画と、それに関連しながら、より具体的な子どもの日々の生活に即した短期的な指導計画を作成しなければならない。


  保育所の保育のカリキュラムは、全体的な計画と指導計画からなります。全体的な計画は目標と狙いを整理したものです。それに対して、指導計画はその目標・狙いを実現するために、具体的にはどういう活動を導いたらよいのかを示すものです。その具体的なあり方は地域や季節や天候、さらにその園の環境、その時期のその園・クラスの子どもたちの活動の流れなどにより変わります。たとえば、散歩に行くとしても、庭が極めて広ければそもそもしないかもしれません。行く途中の道道の様子や行った先の公園などの様子でもやることが違うでしょう。夏秋冬など季節に応じて見つかるものも変わります。具体的に何をするかは、日々の展開で変えていってもよいのです。晴れか、雨か、雪かでも当然することが変わり、子どもの経験が異なるはずです。そうだとして、それに対応して、ねらいも違うこともあるでしょう。どんぐりを見つけて集めるなら、秋の自然に親しむという狙いに向けての活動かもしれません。公園で鬼ごっこを楽しむなら、全身運動することがねらいになるでしょう。

 指導計画が具体的になればなるほど、実際の指導上、参考にしやすいのですが、同時に、そこにこだわりすぎると、実情に合わないばかりか、せっかくの子どもの出会いや気付きの可能性を無視することになりかねません。公園で運動遊びをしようと出かけたら、雨上がりでちょうど虹が出てきたら、それを見ないで、あくまで運動をするのではなく、皆で虹が消えるまで眺めて、その後、きれいだったとか、どんな色があったかな、と会話が弾むでしょう。それは自然の現象への気付きですし、思いがけない天候への驚きと感動であり、その後、たとえば、園に戻って、虹について調べたり、霧吹きで虹を作ってみたりという活動に広がってもよいでしょう。たまたまの機会を生かして、活動は様々に広がりうるのです。
 そこで、指導計画は長期と短期に分けると便利なのです。長期とは年間、季節、学期などの期、月を単位とした指導計画であり、週や日を単位とする短期のそれとは区別しておきます。園によっては、2 週を基本単位としているところもあります。季節ごとの主な活動や行事などを組み入れ、全体的な計画との関連を立てるには年間などの長期の指導計画が向いています。また、担当する子どもの日頃の生活の全般的な様子や年齢などの発達的な特徴なども考慮しやすくなります。指導計画ですので、そこに具体的な活動を入れ、狙いと関連を見やすくします。
 そうすると、全体的な計画→長期の指導計画→短期の指導計画という流れと、逆に、短期の指導計画→長期の指導計画→全体的な計画という流れの両方が生じるわけです。その短期の指導計画に基づく保育は、さらに実際にやりながら、臨機応変に子どもの様子を見つつ、変えていくことでしょう。むしろ、毎日毎時間の保育の細部まで短期とは言え、指導計画で決定されているわけではありません。指導計画を念頭に置きながら、その時々の状況で変えていってよいのです。ただ同時に、その保育の最中でなくても、その新たに生じたことやそこで思いついて実施したことが短期・長期の指導計画やさらに全体的な計画のどこに位置づくものなのかを見直して、子どもの活動の意味を確認しましょう。それにより、短期の次の段階への見通しが立てられます。今日は、思いがけず予定とは少し違うが面白い活動が見られたので、その意義を考えると、明日以降、こんな方向に発展できるのではないかと考えて、次の日や次の週の指導計画を修正のです。そうなってこそ、指導計画は「適切」と言えるものとなります。子どもの発達や生活の状況にふさわしいものになりつつ、全体的な計画などの、当初のねらいでないにしても、そこのいずれかのねらいに向かうものとなるからです。

 
いかがでしたか?それではまた来月

保育所保育指針の改訂のポイント(その 10) 保育の環境

[むっちゃん先生と学ぼう] 投稿日時:2018/04/04(水) 10:30

むっちゃん先生と学ぼう
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このコーナーでは、むっちゃん先生(無藤隆教授)が、保育・幼児教育の大事なポイントを分かりやすく解説します。一人でじっくり読むのもよし!研修の素材として、園やクラスのみんなと読むのもよし!様々な形でご活用ください。毎月1回(第1水曜日を予定)お届けします。読まなきゃ、損。差がつきますよ!

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こんにちは、無藤隆です。今月のテーマは、「保育所保育指針の改訂のポイント(その 10) 保育の環境 」です。


保育所保育指針
第1章 総則
3 保育の計画及び評価
⑴ 全体的な計画の作成
ア 保育所は、1の⑵に示した保育の目標を達成するために、各保育所の保育の方針や目標に基づき、子どもの発達過程を踏まえて、保育の内容が組織的・計画的に構成され、保育所の生活の全体を通して、総合的に展開されるよう、全体的な計画を作成しなければならない。
イ 全体的な計画は、子どもや家庭の状況、地域の実態、保育時間などを考慮し、子どもの育ちに関する長期的見通しをもって適切に作成されなければならない。
ウ 全体的な計画は、保育所保育の全体像を包括的に示すものとし、これに基づく指導計画、保健計画、食育計画等を通じて、各保育所が創意工夫して保育できるよう、作成されなければならない。


 保育所はその保育を「組織的計画的に」進めるとしています。計画的とは行き当たりばったりではなく、前もって、どのように子どもを育て教育していくかのねらいと内容を理解し、それを整理し、活動において実現できるように考えておくことです。組織的とは、それがねらいと内容をつなぎ、さらには総則において示される保育所保育の特質や目標に呼応して進めていくことです。保育所の保育が単に子どもを預かるだけではなく、園の環境を通した保育という原則と養護と教育を一体的に進めていく専門的な営みであることを明確にしています。この保育は養護にしても教育にしても、子どもの発達の進む様子を元にして成り立つものです。発達の流れあるいは進み方を過程として強調しています。子どもの今の様子に応じるだけでなく、その過去の経過を踏まえ、さらに未来に向けて子どもが伸びていくあり方を発達過程と呼んでいます。
 保育所保育の目標を達成するために、ねらいを整理し、それに応じた内容を持った活動の基本を示すものを全体的な計画と呼びます。保育所における生活のあらゆるところでそのための援助がなされており、また特定の活動を取っても、発達の多くの面に関わって援助がなされるので、「全体的」と称します。ちなみに、この全体的な計画は以前は「保育課程」と名付けていましたが、今回、その全体的な特性を強調することと、幼稚園や認定こども園と共通の名称として統一されました。

 全体的な計画は子どもの長い目で見ての成長に関わります。保育士の子どもへの働きかけは今の必要に応じるとともに、週、月、年、さらに乳幼児期全体やその先を念頭に置いてなされるものです。ですから、保育士は子どもの育ちの長期にわたる見通しを持っている必要があります。それは一般的な発達的傾向であると同時に、保育所という場所において、さらにその保育所の保育への理念に基づいて、子どもをこういう方向へと育てたいという保育する側の願いと経験により立てられるものです。子どもの日々の状況やその園に通わせる家庭の特徴、さらには地域の実態などを踏まえることも大切です。
 毎日の保育の時間も重大な考慮内容です。8 時間程度なのか、朝早くからか、夕方以降の保育もあるのか。子どもの多くはどうであるのか。その子どもはどうなのか。 全体的な計画は基本的には年齢などに応じて、多くの子どもの典型的な様子に応じて作るものですが、特に特徴的な個性のある子どもがいるときには配慮が必要ですし、子どもの個性に応じた違いについても組み込みましょう。
 全体的な計画は目標、ねらいに応じるところを示し、日々の具体的な活動につながるところは「指導計画」にゆだねます。むしろ、保育所の生活のすべて、そして目指して育てようとする全容を整理して保育士に分かるようにするものです。そこにおいて、保育所の保育は要するに何をすることなのかが明示されます。そして、日々の保育については、全体的な計画に基づいて、指導計画、保健計画、食育計画等により進めます。その二つの水準を分けることにより、しっかりと目標とねらいを持ちながら、日々の保育は様々な状況に応じて柔軟に進めることができるようになるのです。
いかがでしたか?それではまた来月

保育所保育指針の改訂のポイント(その 9) 保育の環境

[むっちゃん先生と学ぼう] 投稿日時:2018/03/07(水) 10:20

むっちゃん先生と学ぼう
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このコーナーでは、むっちゃん先生(無藤隆教授)が、保育・幼児教育の大事なポイントを分かりやすく解説します。一人でじっくり読むのもよし!研修の素材として、園やクラスのみんなと読むのもよし!様々な形でご活用ください。毎月1回(第1水曜日を予定)お届けします。読まなきゃ、損。差がつきますよ!

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こんにちは、無藤隆です。今月のテーマは、「保育所保育指針の改訂のポイント(その 9) 保育の環境 」です。


保育所保育指針
第1章 総則
2 養護に関する基本的事項
⑵ 養護に関わるねらい及び内容
イ 情緒の安定
(ア) ねらい
① 一人一人の子どもが、安定感をもって過ごせるようにする。
② 一人一人の子どもが、自分の気持ちを安心して表すことができるようにする。
③ 一人一人の子どもが、周囲から主体として受け止められ、主体として育ち、自分を肯定する気持ちが育まれていくようにする。 ④ 一人一人の子どもがくつろいで共に過ごし、心身の疲れが癒されるようにする。 (イ) 内容 ① 一人一人の子どもの置かれている状態や発達過程などを的確に把握し、子どもの欲求を適切に満たしながら、応答的な触れ合いや言葉がけを行う。 ② 一人一人の子どもの気持ちを受容し、共感しながら、子どもとの継続的な信頼関係を築いていく。 ③ 保育士等との信頼関係を基盤に、一人一人の子どもが主体的に活動し、自発性や探索意欲などを高めるとともに、自分への自信をもつことができるよう成長の過程を見守り、適切に働きかける。 ④ 一人一人の子どもの生活のリズム、発達過程、保育時間などに応じて、活動内容のバランスや調和を図りながら、適切な食事や休息が取れるようにする。


養護とは単に安全で健康に過ごせるようにすることに止まりません。それを基盤としながら、さらに子どもの情緒の安定へとつなげていきます。何より小さな子どもは心身は互いに密接につながり合っています。大人のように我慢し、耐えていくということはできないですし、体の不調がすぐに心に現れ、子どもが生き生きとしているかに関わってきます。情緒の安定とは子どもが安心してその場にいられることから始まります。保育所そして保育室(特にそこにいる、昼寝するなど)、トイレ、また子どもが好きで遊ぶ場所などで、緊張せずに不安なくいられるのかどうか。子どもは家庭から離れ、新しい場所だと特に、ここにいて大丈夫かと気持ちが不安定になっています。

そこにいても誰からも怒られない。もちろん危害をいつ加えられるかと心配しないでよいとなっていてほしいわけです。
子どもの安定した気持ちとはそういった否定的な感情で落ち着かないでいることから、ゆったりとして過ごし、穏やかな気持ちでいられることです。そうすると、少しずつ子どもはその気持ちを外に表し、表情が和らぎ、喜びや興味の感情を表すようになります。保育所ではいろいろな遊具が置いてありおもしろそうです。同年代の子どもたちもいて、一緒に過ごしてよいのです。興味を持ったものに触ろうとして怒鳴られることなどありません。もちろんたまたま危険なことをしていたら、保育士はそれを止めますが、それも素早く、でも穏やかに制止することでしょう。
子どもが主体的であるとは、やってみたいことをやってもよいという状況にいて、いろいろな意欲が沸きたつように生まれてそれをしようとすると、支えてくれる大人がいるところで安心して、やっていこうとできる状態から始まります。自己肯定感とは、自分がやってみたいと感じることはやってよいのだと感じ、そして手助けを受けながら、それを何とか実現できると感じることです。自分はこの場所にいてよいのだし、意欲を覚えたら、試みてよいという周りへの能動的な関わりを身の回りの人々から認められ、支えられることで生まれてきます。 そのために、一人一人への丁寧な対応が欠かせません。子どもが小さければなおさらそれぞれの個性や発達の違いは大きいし、また日々の体調の変動も大きいでしょう。子どもが日々、くつろいで過ごせるよう、睡眠や食事や遊びへの配慮を行い、そして子どもが指針をリフレッシュして、また周りへの興味や関わりが広がるようにしていきます。
そういった安定感、安心感、自己肯定感を保障し、育てていく営みが保育士の行う養護ということです。それは簡単なことではありません。保育士の専門性がそこにまさに必要とされるからです。 まず、一人一人ごとの様子を把握しますが、その背景としては、その年齢・月齢ではどういった発達が見られることが多いかを理解しておきます。そこで大事なことは平均にとらわれず、多くの子どもの育ちの幅や違いを知っておくことです。同時に、その子どもの日頃の様子を把握した上で、その日の調子を見定め、また登園時の姿などにも注意しておきます。
子どもの活動の一日の流れやリズムを大切にしましょう。どうしても大勢いるときに一斉にあるいは一律にやらざるを得ないこともありますが、できる限り、一人一人に応じて行きます。少し待ってやるなどの調整ができるだけでも子どもは落ち着きます。
子どもは活動的な時間帯とゆったりと過ごしたい時間帯とがあるものです。疲労に注意しながら休むときには休み、でも熱中できるときにはそれを支えます。
そこで子どもが何をしたいか、何を必要としているかについて、よく見たり、また耳を傾けたりします。言葉になることはもちろん、表情や仕草やちょっとした声の調子で分かることは多くあります。その欲求を満たすのはなるべく早く応じるべきことや少し待っていて良さそうなことを見分けながら、対応していきます。
保育士の関わりの中核は応答性にあります。子どもは常に自分が働きかけたことや自分の関わりに対して、返答があり、手応えが返ってきて、さらに共感や注意や賛同を求めています。それがあってこそ、さらに周りに自信を持って積極的に関わっていけるのです。子どもの視線、姿勢、表情、声、言葉に十分配慮しながら、子どもの関心の方向へと子どもを支えていきましょう。何も大げさな褒め言葉や応援は不要です。うなずき、ほほえみ、「いいね」と声を掛けることでよいのです。そして何か助力を求めていたら、一人ではとうてい無理なら手伝ってやり、多少のことでできそうならヒントを出し、という具合に関わります。
そのように子どもの意欲や不安を認め、受け入れながら、それを解きほぐし、関わろうとするところへと向けていき、支えます。そこから子どもからの信頼感が生まれ、少しずつ持続したものになっていきます。

そういう信頼関係が安定して育てば、そこから子どもは周りへの関心を大きく広げ、積極的にいろいろなことに興味を持ち関わっていくでしょう。そこに主体性の育ちの始まりがあります。それは、子どもがやりたくなってやる自発性から始まり、周りには何があるのか、そこでは何ができるかを探索することにと展開していきます。
子どもの世界が広がり、周りの世界を知っていくことにと発展するのです。子どもは自分がそこにいて、興味を持ったものに関わって、そこでおもしろいことや楽しいことを生み出されのだという自信を抱くようになります。そこから子どもの主体的な成長が始まります。保育士は常にその様子を見守り、必要があればいつでも関わり、手助けできるように用意をしているのです。そこに保育士の専門的援助の力量が現れるのです。
いかがでしたか?それではまた来月

保育所保育指針の改訂のポイント(その 8) 保育の環境

[むっちゃん先生と学ぼう] 投稿日時:2018/02/07(水) 11:00

むっちゃん先生と学ぼう
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このコーナーでは、むっちゃん先生(無藤隆教授)が、保育・幼児教育の大事なポイントを分かりやすく解説します。一人でじっくり読むのもよし!研修の素材として、園やクラスのみんなと読むのもよし!様々な形でご活用ください。毎月1回(第1水曜日を予定)お届けします。読まなきゃ、損。差がつきますよ!

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こんにちは、無藤隆です。今月のテーマは、「保育所保育指針の改訂のポイント(その 8)保育の環境 」です。


保育所保育指針
第1章 総則
2 養護に関する基本的事項
⑵ 養護に関わるねらい及び内容
ア 生命の保持
(ア) ねらい
① 一人一人の子どもが、快適に生活できるようにする。
② 一人一人の子どもが、健康で安全に過ごせるようにする。
③ 一人一人の子どもの生理的欲求が、十分に満たされるようにする。
④ 一人一人の子どもの健康増進が、積極的に図られるようにする。
(イ) 内容
① 一人一人の子どもの平常の健康状態や発育及び発達状態を的確に把握し、異常を感じる場合は、速やかに適切に対応する。
② 家庭との連携を密にし、嘱託医等との連携を図りながら、子どもの疾病や事故防止に関する認識を深め、保健的で安全な保育環境の維持及び向上に努める。
③ 清潔で安全な環境を整え、適切な援助や応答的な関わりを通して子どもの生理的欲求を満たしていく。また、家庭と協力しながら、子どもの発達過程等に応じた適切な生活のリズムがつくられていくようにする。
④ 子どもの発達過程等に応じて、適度な運動と休息を取ることができるようにする。また、食事、排泄 、衣類の着脱、身の回りを清潔にすることなどについて、子どもが意欲的せつに生活できるよう適切に援助する。


  養護とは保育指針では、生命の保持と情緒の安定として規定されています。保育士はまずは生命の保持を可能にするのは、子どもを預かる以上、当然ですが、それは単に命が危険であること以上の働きがあります。子どもが生き生きと生活し、成長していくことの基盤中の基盤を生命の保持と呼んでいます。

  子どもの快適さを保ちましょう。それは嫌なことをすべてなくして、子どもが喜ぶことばかりを用意しようというのではありません。子どもの心身の働きが回転するように進んでおり、心地よい状態が可能であることや、嫌なことがあってもそれは一時的なことですぐに快適な状態に戻れるということを意味しています。さらに、その場で対応するだけでなく、気持ちよく生活できるように環境の隅々まで配慮し、また子どもの側の生理的自然を大事にして、そのペースを元に生活のあり方を組み立ていくのです。その快適さは何より子どもの表情や振る舞いが穏やかであるか、生き生きとしているか、たびたびかんしゃくを起こしたりしていないか、沈み込んだ姿はないか、ボンヤリとして過ごしていないか、などで見えてきます。
  そういった快適さを実現する上で、健康で安全な生活環境は欠かすことが出来ません。それはケガや病気をしないということですが、実は 100%それをなしには出来ません。病気なら感染症の細菌やウィルスとの接触はゼロにはできないのです。ただ、手を洗う、うがいをするなどを励行し、また吐瀉物や排泄物の処理からの感染を防ぐ手立てを素早くすることによって、かなりを防げることは確かです。ケガにしても、振り返ってみると、もっともな原因やきっかけがあるものです。つまづくとか、ものを落とすとか、落ちるとか、やけどをするとか、飲み込むとか、小さな子どものケガの原因や誘因の多くは分かっています。定期的にそれについて点検をする必要があります。また特に片付けには配慮して、危険をその都度防止しましょう。
  難しいのは昼寝中や水遊び中の事故の予防です。きちんとしたマニュアルがあるので、それを厳守することが基本です。アレルギー対応もそのやり方が決まっているので、守りましょう。
  特に小さい子どもであればある程、生理的欲求を自分では満たせないので、保育士が配慮すべきです。飲食や排泄、睡眠などがしっかりと確保されるよう、環境を整えるとともに、子どもの様子や行動に応じて機敏にかつ適切に対応していきます。その際、難しいのは、その時の欲求を満たすこととともに、自立に向けて育てていくという責務が大人にはあるということです。自分でやれる範囲と大人がやってやるところを区別し、さらに少し手伝えば出来るところや補助を入れればほぼ自立するところ、また自立はしていないが、自分でやろうとする意欲を大切にして、それを援助することなど、保育士の仕事は微妙で複雑であり、だからこそ専門性があると言えるのです。子どもの今を大事にして、快適で幸せな状態を確保し、それを通して将来への育ちへの布石を作っていきます。
  健康の増進とは、例えば、よく寝ること、まんべんなく、よく噛んで食べること、体を動かすこと、快活に快適に過ごすことなどからなります。子どもには自ずと成長する力があります。生理的欲求を満たせば、次に成長への力が湧き出てきます。それを大事にして、その勢いがうまく生まれ、育っていくことが保育という仕事の中心です。
  健康のために、が先に来るのではありません。まず、快適に過ごすという状態があってこそ、生きる元気が生まれます。そのためにも、健康な生活条件を整え、危険や環境をなくし、さらに生理的欲求を満たすのですが。それがいかにして成長する力へと広がるか。その援助が保育です。
  こういった養護の中でも生命の保持が基本の中の基本であるとは、まさに子どもが生物的存在であるからです。心の成長はその生命のあり方が十全に満たされて出てくることなのです。  
いかがでしたか?それではまた来月

保育所保育指針の改訂のポイント(その 7) 保育の環境

[むっちゃん先生と学ぼう] 投稿日時:2018/01/10(水) 10:00

むっちゃん先生と学ぼう
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このコーナーでは、むっちゃん先生(無藤隆教授)が、保育・幼児教育の大事なポイントを分かりやすく解説します。一人でじっくり読むのもよし!研修の素材として、園やクラスのみんなと読むのもよし!様々な形でご活用ください。毎月1回(第1水曜日を予定)お届けします。読まなきゃ、損。差がつきますよ!

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こんにちは、無藤隆です。今月のテーマは、「保育所保育指針の改訂のポイント(その 7)保育の環境 」です。


保育所保育指針
第1章 総則
2 養護に関する基本的事項
⑴ 養護の理念
保育における養護とは、子どもの生命の保持及び情緒の安定を図るために保育士等が行う援助や関わりであり、保育所における保育は、養護及び教育を一体的に行うことをその特性とするものである。保育所における保育全体を通じて、養護に関するねらい及び内容を踏まえた保育が展開されなければならない。


  保育所保育における教育は養護に支えられたもので、しかも、まずは養護の確保が成り立って、教育は意味をなします。子どもは保育所の中で安全に暮らし、安心して過ごし、そこから落ち着いた気持ちでいられるからこそ、周囲へと関心が向けられ、様々なことに関わろうとするようになるのです。
その養護のあり方は何より子どもが命を持って生きているという事実に向かい合うことから始まります。生きているというのは生物であり、生存しているということを超えた人のあり方が生きるという生命のあり方に根ざしているということを指しています。

児童福祉法の第一条と第二条にこうあります。

第一条 全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。

第二条 全て国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない。
2 児童の保護者は、児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を負う。
3 国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。
健やかに生まれ育っていくためには、何より生活の保障が必要であり、それは単に衣食住だけのことではなく、世話する人が愛し保護することによってなのです。それは何より保護者の責任ですが、同時に、国・地方公共団体から保育の責務を依託されて担っている保育所においても、生活の保障と愛し保護することの責任があります。衣食住が同時に愛し保護することに重なりつながるようなあり方が必要なのです。
そうすると、生命として生きるということには、大人からの愛情と保護が欠かせないのだと分かります。そうであってこそ、子どもはその人間らしいあり方を保持し発揮できるのです。 保育指針では、この養護を生命の保持と情緒の安定という二つとして整理しています。それは、養護性という大きな子どもの生命のあり方に根ざして成り立つ二面であり、まったく別なことというのではありません。生命とは単に飢えないとか眠れるということを含めて、そこに心身のあり方の生き生きとしたあり方の保全と発展を志向するものだからです。
衣食住の保障からさらに子どもの生き生きとしたあり方を可能にしていくことが養護です。それは、実際に、生命を保持する保育士の営みが愛護と不可分であり、そこに子どもの生命性の発揮としての生き生きとした状態を支え、広げていくことなのです。
子どもの情緒の安定からさらに自己を肯定し、周りの「世界」に開かれていくことに発展していくので、そのことを養護と教育の一体性と名付けています。子どもの眠り、起き、周りを見回し、排泄が気持ちよくなされ、お腹が空いたらミルクや食べ物を口にできる。そこに、周りの大人が親密な関わり方をすることで、養護の働きかけが子どもの健やかな育成の土台を作っていくことになります。
保育士がとりわけ子どもが小さい時期にまた長い時間保育所で生活するときに、養護としての関わりを丁寧に行うことから子どもは周りへの関心が生まれ、育ち、能動的な主体としての子ども自身の物事や周りの人への関わりが始まっていきます。そのような子どものあり方を引き出すためにこそ、日常の一コマ一コマにある小さな世話に愛情を込め、丁寧に子どもに応答していく保育の仕事のすばらしさがあるのです。

 
いかがでしたか?それではまた来月
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